「妖精を捕まえれば宝物のありかを教えてくれる」——震災乗り越え27年、レプラカン歌劇団が千葉・本土寺で侍&花魁ショー始動


レプラカン歌劇団

 1999年に結成され、今年で27周年を迎えた「レプラカン歌劇団」。かつては和倉温泉加賀屋で「加賀屋レプラカン歌劇団」として華やかな歌と踊りのレビューショーを連日繰り広げていた。能登半島地震後は、「七尾ふるさと大使」として、日本文化と地域の魅力を国内外に発信している。8月21日からは、新たな取り組みとして、主にインバウンド客向けのショー「日本文化体験 侍&花魁 (JAPANESE CULTURAL EXPERIENCE SAMURAI&OIRAN)」を紫陽花寺としても有名な千葉県松戸市の本土寺で始めた。初日の公演後、レプラカン歌劇団の代表である夏輝レオン氏と座長であるゆふきれい氏に話を聞いた。

 レプラカン歌劇団は8月21日、千葉県松戸市の本土寺で「日本文化体験 侍&花魁(JAPANESE CULTURAL EXPERIENCE SAMURAI & OIRAN)」の第1回公演を開催した。公演時間は12時30分から14時00分の1時間30分。内訳は13時〜ショー 13時30分〜体験 14時〜懇談と写真撮影となっている。Airbnb Experiences、GetYourGuide、Viatorの各インバウンド向けプラットフォームで予約を受け付けており、海外からの旅行者を中心に広く参加者を募っている。

【kankokeizai.com 編集長江口英一】

「R」と「R」から生まれた名前——宝物のありかを教える妖精

 チーム名「レプラカン」の由来は、2人の頭文字にある。代表の夏輝レオン氏の「R」と、座長のゆふきれい氏の「R」、2人の名前の頭文字から始まる単語を探していたところ、「レプラカン」という単語にたどり着いた。

 「宝物をたくさん持った妖精で、その妖精を捕まえると宝物のありかを教えてくれる。私たちのショーを見て私たちを捕まえたら、楽しいことやあなたにとっての宝物をあげる、という感じでショーを作っていこうと思いました」とゆふきれい氏は振り返る。

 ちょうどプロダクションから電話が入り、チーム名を問われたその瞬間、まだ決まっていなかった名前として「レプラカン」を答えたのが始まりだという。

レプラカン歌劇団 代表 夏輝レオン氏

 

 結成は1999年。ゆふきれい氏はOSK日本歌劇団の出身で、日舞あり洋舞あり、何でもこなすレビューショーの仕事で、ミュージカル出身の夏輝レオン氏と出会い、2人でチームを組んだ。夏輝氏はレビューの華やかな衣装や化粧に「こんな世界があったんだ」と衝撃を受け、この世界に入り込んだという。

 「レストランの本当に手がぶつかるような2畳ぐらいの中でショーをしたり、中華料理屋さん、お寿司屋さん、クラブのトイレで着替えたり、そんなことをやっているうちに」と夏輝氏は当時を語る。

 レパートリーは幅広い。日本舞踊から民謡、ラテン、ジャズ、シャンソン、ミュージカルナンバーまで、歌と踊りを組み合わせたオールマイティな構成だ。その後は全国のホテルを中心に長期公演を続けた。「1ヶ月ショーをやったら休みなく、千秋楽の翌日に移動して初日という生活を10年していた」と夏輝氏。ほとんど帰宅しない生活が約10年続いたが、リーマンショックで地方の仕事が減少し、東京に拠点を移すことになった。

レプラカン歌劇団 座長 ゆふきれい氏

加賀屋との縁、コロナ、そして震災

 2003年には石川県和倉温泉の老舗旅館「加賀屋」の歌劇団立ち上げにトップとして関わった。当初は「加賀屋雪月花歌劇団」という名称でスタートし、立ち上げから関わり約2年間花組として出演。その後レプラカンとして独自の活動に戻ったが、コロナ禍での環境が変化したことを機に、再びつながりが深まった。

 「コロナの時期に再びプロダクションの方からお話しいただいて、制作はレプラカンで全部やってほしいというオファーがあったので、コロナの後からはレプラカン歌劇団が加賀屋に入ってショーをスタートした」と夏輝氏は説明する。

 

 加賀屋内のシアタークラブ「花吹雪」での常設公演が軌道に乗ったころ、令和6年能登半島地震が発生。公演機会が失われた。

 震災後、加賀屋の顧問を務めていた人物がレプラカン歌劇団のショーをかねてから高く評価しており、仕事がなくなった2人を心配してJTBへの橋渡しをしてくれた。これが復興支援公演の出発点となった。

 なお、コロナ禍には茶道を学ぶ機会を得た2人が、茶道と踊りを組み合わせた「舞踏お茶会」を考案している。自ら茶道の道具を用意し、お茶会30分と舞踊ショー30分の1時間のコンテンツとして提供した。この経験は、現在のインバウンド向け文化体験プログラムの土台にもなっている。

東京で30回超の復興公演、クルーズ船でも

 加賀屋、アサヒビール、JTBの3社が協業し、2024年10月から12月、東京都港区のアトレ竹芝1階「SHAKOBA(シャコウバ)」で「加賀屋レプラカン歌劇団」の特別公演を開催した。実施日は10月11日から14日、11月2日から5日、12月6日から9日の各月4回、全12回の公演だ。チケット代は北陸復興支援特別価格の4,000円(税込)で、アサヒスーパードライ生ジョッキ缶などのドリンク1種とミックスナッツが付いた。

 好評につき、2025年3月20日から22日にも同会場でアンコール公演(全6回)を実施。さらに2025年6月21日から23日には「サマードリーム」と題した公演を行った。

 「最初にやったのは丸ビルで、プロジェクションマッピングを取り入れた夏祭りの企画で、矢倉の周りで踊るという新しい体験をさせていただいて」とゆふきれい氏。竹芝での公演を含め、合計約30回に及んだ。スポンサー支援があったため、通常より安価なチケット価格での一般販売が実現した。

 2025年のゴールデンウィークには、JTBメディア主催のチャータークルーズ「旅物語」の一環で、イタリア船籍のコスタセレーナに乗船。約1週間にわたり毎晩公演を実施した。「3700人乗船出来る船で、夜のショーに出演する専属のダンサーの人たちがいるんですけど、私たちは昼間にその舞台でショーを行いました」とゆふきれい氏。韓国のプサン、大阪、東京を巡るクルーズだった。

台湾への感謝——雨の中、観客が携帯のライトを照らした夜

 2025年11月には、台湾北投温泉で「謝謝!台湾 加賀屋レプラカン歌劇団 特別公演」を4日間開催した。加賀屋、アサヒビール、JTBの3社が協業し、能登半島地震の発生直後にいち早く支援を寄せた台湾への感謝を直接伝えることが目的だ。

 公演会場は日勝生加賀屋と北投温泉博物館の2カ所で、湯守観音祭のオープニングとエンディングでも公演した。日勝生加賀屋での歌劇団公演は今回が初開催で、同旅館の創業15周年記念にも位置づけられた。社団法人台灣藝起公益協會や温泉博物館、七尾商工会議所、和倉温泉商店連盟とも連携した。

 「能登半島地震の直後に台湾から一番に支援があった。それに対する感謝ということで、入場料無料での公演でした」と夏輝氏。4泊5日の期間中、計8回の公演を実施し、来場者は約1,000人に上った。

 公演は完全に現地の台湾の人々を対象としたものだった。雨が降り出した夜もあったが、観客は傘を差しながら最後まで鑑賞を続け、携帯電話のライトでスポットライトのように照らす場面もあった。「感動的なシーンでした」と夏輝氏は振り返る。

 加賀屋社長の渡辺崇嗣氏は「台湾とのさらなる連携を深めて、多大なるご支援をいただきました台湾の皆さまに感謝を込めてお届けいたします」としている。アサヒビール社長の松山一雄氏は「言語や文化の壁を越えて楽しめる華やかなショーは、両国の心をつなぐ架け橋となると確信しています」と述べ、JTB社長(現会長)の山北栄二郎氏は「七尾、和倉、そして加賀屋の皆さまの想いを国内外にお届けするお手伝いができることを、心より嬉しく思っております」と語った。

七尾ふるさと大使として能登に立つ

 昨年7月27日、七尾市からふるさと大使に任命された。七尾駅から徒歩約10分の道の駅「食祭市場」のステージで、年に3回程度の公演を続けている。地元の食祭市場が主催し、レプラカン歌劇団を招いている形だ。

 「七尾ふるさと大使としての活動もできるし、海外の人に日本文化を知ってもらいたいと思って」とゆふきれい氏。能登の復興と日本文化の発信を、舞台を通じて両立させている。

本土寺での公演——助六と揚巻の物語を軸に

 今回始まった「日本文化体験 侍&花魁」は、江戸時代を代表する演目「助六と揚巻」の物語を軸に構成されている。花魁・揚巻と、江戸の粋と勇気を持つ助六。2人の愛と勇気を日本舞踊の世界で描く。日本舞踊は坂東流・坂東利太郎師と夕浪流・夕浪千鳥師に師事して習得したものだ。

 プログラムは、朱色の仁王門から参道を歩き、受付入口でスタッフの案内により畳の和室へ向かうところから始まる。1277年に創建された本土寺の境内は、四季折々に変わる日本庭園の美しさで知られる。

 花魁と侍による日本舞踊ショーを間近で鑑賞した後は、観客自身が助六役と花魁役になる体験が待っている。「花魁道中」から「吸いつけ煙草」までの所作を、出演者のお手本を見ながら音楽に合わせて演じ、最後は決めポーズで記念撮影をする。英語版オリジナルガイドブックの持ち帰りも含まれる。

 2026年の公演日程は、9月10日・11日・18日、10月15日・16日、11月14日、12月18日を予定している。

 「海外のサイトに登録したかったんですけど、すごく難しくてちょっと引いてたんですが、きっかけがあってやってみようかと思って。登録したのに1ヶ月くらいかかったんですけど」とゆふきれい氏は経緯を明かす。

 公演回数は当面月2日程度の不定期だが、予約状況によっては増やす方針だ。「本当は毎日やりたいんです。毎日やった方がお客さんが予約しやすいんですけど」とゆふきれい氏。

 コロナ禍では、文化庁の「アートにエール」事業の助成を受け、会場の赤い橋の上で公演動画を撮影した実績もある。この動画はYouTubeで「アートにエール」のシリーズとして公開されている。

子どもたちに憧れを——学校・教育機関への展開も視野に

夏輝レオン氏(左)、ゆふきれい氏(右)

 幼稚園・保育園での公演経験も、団の今後の方向性に影響を与えている。コロナ禍に全国の幼稚園を回る歌のお姉さんの仕事を経験したことで子どもたちとの交流が増え、その後も近隣の幼稚園・保育園で公演を行った。

 「子ども向けにしないで、豪華な衣装のままショーをしたんですけど、すごく喜んでくれて、衣装を触りに来るんですよ」とゆふきれい氏は振り返る。「子ども向けにしない方が子どもは憧れて、いつかあんなことしたいなと思ってくれるというのを感じました」。

 こうした経験から、学校公演や修学旅行、芸術鑑賞会など教育機関での日本文化体験公演にも、今後力を入れていきたいという。全国各地での公演に柔軟に対応するとしている。

 レプラカン歌劇団のこれまでの海外公演実績には、台湾国立伝統芸術センター(2011年10月)、台湾の円山ホテル(2016年4月)、フィリピンのマニラホテルでのディナーショー(2018年11月)、アメリカのラフリン・ロサンゼルス・サンフランシスコでの公演などが含まれる。台湾では桃園文化局やアンバサダーホテルでも公演歴がある。

 チームの編成はおよそ10名で、仕事の内容によってメンバーを入れ替えて対応している。

 結成から27年。「お客様に夢と希望を提供する」というレプラカンの理念は、震災を経てもなお、舞台の上で生き続けている。

 
 

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