【岐路 バスと観光 新たな関係 77】高速バスと観光 15 成定竜一


 さらに、大都市部での乗降場所の設定の問題もある。

 わが国の高速バス事業は、かつての運輸行政の名残で、大都市部では方面別に運行する事業者が分かれている。例えば、中央道方面は主に京王バスが、関越道方面は主に西武バスが、それぞれ長野県や新潟県のバス事業者と共同運行を行っている。おのずと、前者は新宿、後者は池袋という風に運行事業者によって乗降場所が決まる。だが、旅行会社によるバスツアーの分野を見ると、日にちによって郊外のベッドタウンに集合場所を設定する事例が多い。

 確かに、手荷物を持って、ちょうど通勤ラッシュに当たる時間帯に電車を乗り継いで「バスタ新宿」をはじめ都心部のバスターミナルに向かうというのは旅行者にとって大きなストレスである。特定の日だけ設定されるバスツアーと同様にとはいかないものの、何らかの工夫を重ねて、郊外駅からの高速バスを設定する必要を感じる。

 現に、東京ディズニーリゾートや御殿場プレミアム・アウトレット、富士急ハイランドのように、圧倒的な集客力を持ち、かつ公式サイトなどで高速バスを積極的にアピールしてくれる集客施設へは、横浜や大宮といった拠点駅をはじめ、たまプラーザ(横浜市青葉区、東急田園都市線)など郊外駅から直通する路線も増えている。

 FITを想定した場合には、東京都区内や大阪、京都市内などにおいて、ホテルでのピックアップサービスもまた実現が求められる。
 東京を例にとれば、伊豆、箱根、富士五湖、草津温泉などへ多数の高速バスが運行されている。FITの利便性を考えれば、都内の主要ホテルからこれらの路線にそのまま乗車できることが理想的だが、それは現実的ではない。

 せめて、「日比谷、銀座、新橋方面」「品川方面」などエリア単位で乗客をピックアップし、「バスタ新宿」をはじめとしたバスターミナルにいったん集結させ、高速バスに乗り換えてもらうようなサービスを考えるべきだろう。

 (高速バスマーケティング研究所代表)

 
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