【山崎まゆみの「ちょっと よろしいですか」57】年明けは都内のホテルで過ごしました 温泉エッセイスト 山崎まゆみ


 コロナ感染が拡大していった2020年は私だけでなく、誰もが息苦しい思いをしました。観光業、宿泊業の皆さんはもちろん私以上のご苦労の連続だったと思いますが、少し個人的な事情をつづらせていただきます。

 コロナ禍のせいで、もう1年間、新潟で暮らす両親に会えていません。特に、肺を患っている高齢の父は東京で暮らす私に会いたがりません。貴重な時間が刻々と過ぎていき、これから何回父に会えるのか分かりません。やむを得ない状況だと納得しようとしても、ふるさとに帰れない、両親に会えない寂しさ、そうした感情は簡単には収まりません。

 例年なら年の暮れと年始は実家で過ごしますが、今年は帰省を控えて東京にいました。

 自粛しながらも、それでも自分を慰めるつもりで都内のホテルで過ごそうと思い付いたとき、VISIT JAPAN大使仲間であり、小田急ホテルセンチュリーサザンタワーとハイアットリージェンシー東京の社長・小柳淳さんの顔が思い浮かび、大みそかに訪ねたのです。

 サザンタワーの高層階に部屋を取ってくださいましたので、客室に入った瞬間に目に飛び込んだのは、窓外に広がる雲一つない青空でした。正面にはNTTドコモ代々木ビルがそびえ立ち、遠くに目をやると東京湾が日の光でキラキラと輝いています。眼下には代々木公園の緑と、その脇を走る山手線と中央線。それら全てに明るい日差しが降り注ぐ光景を見渡していると、2020年のコロナ禍で蓄積された心のよどみが吹っ飛ぶようでした。

 小柳社長にもお会いできました。お客さまへのあいさつに二つのホテルを行き来していた大変ご多忙な中でも、2020年を一緒に振り返ることができたのはうれしいひとときでした。

 大みそかには年越しそばも頂きました。2021年の初日の出はなんと部屋から拝めました。元旦も晴れ渡り、ホテルのダイニングからは富士山も見られ、おかげさまで2021年をとても明るい気持ちで迎えることができたのです。コロナ禍を生き抜いていく勇気を得た時間でした。

 Go Toトラベルキャンペーンにより、2020年後半の温泉地はお客さんでとてもにぎわったと聞きます。ただ東京の宿泊施設にはそうした話があまり聞こえてきません。そもそも東京オリンピック・パラリンピック開催に合わせて施設改修へ多額の投資をしていること、さらに客室が供給過多になっているといった都内のホテル事情の厳しさは周知の事実です。

 人との接触を避け、移動を自粛する期間はどのくらい長くなるか分かりません。

 ただ何か、コロナ禍で頑張っている自分へのご褒美を与えてあげなければ、心身ともに健康でいられるわけはありません。自粛は大切。けれど、東京都民が都内のホテルを利用するくらいのちょっとしたぜいたくは許されてもいいのではないでしょうか。私の体験から、そんなことを思う年末年始でした。

 2度目の緊急事態宣言発出により、今月予定されていた「人気温泉旅館ホテル250選認定証授与式」は中止されました。創刊70周年記念論文コンテスト表彰式も予定されていたと聞きます。積田朋子社長の苦渋のご決断であったとお察し致します。読者の皆さんと一堂に会せる、私が1年で最も楽しみにしている会合ですので、とても残念ですが、ここは気持ちを一つにして乗り越えていくしかありませんね。

 (温泉エッセイスト)

 
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