【地方再生・創生論 345】求められる早期の空き家対策 松浪健四郎


 大阪府泉南市にマンションを持っている。代議士時代に中古だが支持者の紹介で買った。コロナ禍までは、休みがあれば帰省していたが、だんだんと面倒くさくなってきた。家内も友だちがいるため、毎月のようにマンションを利用していたが、やはりコロナ禍で足を止められてしまった。NHKの受信料、電気やガス料金もバカにならないけれど、売る度胸もない。「空き家」そのもので、頭を抱える。

 そこへ「空家対策特別措置法改正案」を自民党がまとめたと知った。中間提言だというが、この法律を早く改正しないことには、地方自治体が困りはてる。

 ともかく全国で増加を続ける「空き家」対策として、新しい考え方が求められている。和歌山県や山梨県は、「空き家」が多すぎて手の打ちようもない。「空き家」の状態が悪化する前から、適切な管理の確保が重要である。状態の悪化した「特定空き家」の除却等を円滑化するために、どうしても改正案が必要である。

 近所に朽ち果てつつある「空き家」があると、安全対策上、美観上、住民たちのクレームのボルテージが上がる。そこで、居住目的のない「空き家」を巡っては、平成27年に施行された「空家対策措置法」で、放置すれば倒壊等の危険性が高く周囲に悪影響を与える可能性の高い「空き家」を、「特定空き家」に指定した。で、行政による除去等の強制執行や修繕等の指導や勧告を行うことが可能となった。一歩も二歩も前進であった。

 ところが、近年、「空き家」は増加する一方で、まだまだ増えると統計が教えてくれる。で、自治体は「特定空き家」に関しては手を打つことが可能となったが、他の「空き家」については指をくわえるしかなかった。私が政治家だった頃、この種の陳情に閉口したことがある。行政が手の出せない「空き家」、治安上もよくないばかりか、家の劣化が早く進むし危険である。

 そこで改正案では、今後、放置すれば「特定空き家」になる可能性の高い「空き家」を、「管理不全空き家」に指定できるようにする。行政が改善等の指導や勧告をした場合、固定資産税を減額する住宅用地特例の適用を解除するようにするという。

 別居していた親や肉親が亡くなり、その家が「空き家」になったとしても、子がその土地を保有しながら減税措置を受けるために、「特定空き家」にしてしまうケースを認めないようにするのだ。居住する人たちの環境向上に役立つだろうが、行政の代執行を可能とするだけに自治体に強い権限を与えている。住民の安全確保のために急がれる改正案で、街並みづくりのためにも役立つと思われる。

 最近、わが家に「空き家のお悩み解決しませんか?」というチラシが舞い込んだ。おそらく、私のように地方から出てきた住民が故郷に住宅を持っていると読んで、このような商売を考えたのであろうか。

 「町との空き家に関する官民連携事業」だというではないか。なるほど、チラシの裏面には、会社と連携している地方自治体約40の実績が列記されていた。私のマンションのある大阪府泉南市も出てきたのには驚いた。北海道から鹿児島県まで、全国ネットで仕事をしているようだ。

 「相続登記が済んでいない」「遠方に住んでいて管理が大変」「空き家を売りたい」「解体したい」、これらの悩みに無料相談にのるという。「空き家」アドバイザーが解決に向けてサポートしてくれるともいう。

 行政の世話になる前、住民に迷惑をかけない前に「空き家」について持ち主は決断せねばならない。いろいろな商売を考えるものだと感心したが、今日的であるような気がする。株式会社ジチタイアドという会社で、本社は福岡市である。

 「空き家」は増えるばかり。地方自治体によっては、その活用も視野に入れていても、手の打ちようもない古い家ではどうしようもない。持ち主の責任の大きさは言うまでもないが、行政が動く前になんとかしてほしいものだ。

 
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