【地方再生・創生論 230】世界の潮流、エネルギーの脱炭素化 松浪健四郎


松浪氏

 「核兵器は最小限のコストで、国家の安全を確保する手段である」。だから、インドと対立するパキスタンまでもが核兵器を持つ。イランも北朝鮮も核武装する理由は、やはり国家の安全のためだ。外交を推進させるパワーは、軍事力であるのは、いつの世も変わらない。知識人やメディアは、核武装のおろかさを説くが、外交舞台で1国のトップと交渉したことのない無責任な理想家のタワケ言だ。

 わが国は、核兵器を保持しない。「持たない。作らない。持ち込まない」という三原則を堅持してきた。米国との安全保障条約が締結されていなければ、この日本は丸裸だ。かかる軍事的事象について記述してきたのは、政府は新しいエネルギー基本計画の原案で、再生可能エネルギーの拡大を表明しているにもかかわらず、原子力発電を現行の6%から20%前後まで比率を高めようとしているからに他ならない。原発が稼働しておれば、「プルトニウム」を生産することにもなる。

 「プルトニウム」こそが、核兵器を製造する原料。これさえあれば、日本の技術力をもってすれば、容易に核兵器を造れる。それゆえ、IAEA(国際原子力機構)は、予算の8割を日本原発の監視に使っている。唯一の被爆国・日本を現在でも世界中が注目しているのは技術力の高さであろう。もし、原発ゼロにすれば、外交力にも影響を及ぼすといえる。

 ともかく、世界の潮流は「エネルギーの脱炭素化」であり、この政策に政府は取り組まねばならない。気候変動への対応をすべく、温室効果ガス排出を減少させる責任が国にある。2050年のカーボンニュートラルの実現のためには、現在の主力電源は天然ガス等を用いた火力発電であるが、再生可能エネルギーへの大転換が求められ、その計画原案が公表された。火力は現在の37%から20%へ減少させようとしている。CO2を回収したり、貯留する技術の開発もあり、再生エネルギーを補うための電源に政府はしたい考えだ。

 太陽光発電は、現在の7%から15%へと倍増させようとしている。埼玉県所沢市では、公的機関の屋根に太陽光パネルを置き、自産自消の政策を取る。政府も公共施設の屋根や荒廃農地を活用することをすすめ、発電コストも低減させるべきと説く。ただ、パネルの設置は美観を損なうとして、設置に反発する自治体が増加中。さらに森林の伐採によって、災害の心配をする自治体も少なくない。

 だが、各自治体が率先して再生可能エネルギー政策のための太陽光パネルを設置して、公共団体関係の電力を自前で産むことを考えるべきだ。で、政府もそのために支援策を考慮せねばならない。加えて、地熱発電は開発にコストが高くつく。公共団体、自治体が開発に乗り出し、政府が応援する形態を取らねば進行しない。開発に時間がかかる、資源の8割が自然公園内にある、高額の資金が必要である等の理由によって、民間よりも自治体や第三機関の企業体のパワーが求められる。

 地熱発電は、現在の0・3%から1%へと進める計画だ。火山国である日本は、本気になって地熱発電を推進するために温泉法や自然公園法の運用を見直して、取り組まねばならない。とりあえず、温泉地のある自治体は議会で議論し、政府と協議して再生エネルギーの拡大に寄与してほしい。基本計画の原案は、カーボンニュートラルの実現に向け、主力電源の導入を目指していると同時に電気料金をいかに上昇させないかの研究でもあろう。

 風力発電も0・7%から6%へと原案は進めようとしている。導入までに地元との調整や規制への対応に時間がかかるため、自治体の協力が不可欠だ。蓄電池の普及が一般化されれば、風力発電、太陽光発電等の電力をためておける。電力の安定供給こそが産業界の心配事、蓄電池こそが経済を救う。日本は世界的にみても停電が少ないゆえ、蓄電システムの必要性がないにしても、産業界では大切だ。エネルギー基本計画を各自治体は、自家薬籠中の物にすべきである。

 
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