【日本政府観光局インバウンド最新リポート 131】フィリピンの訪日需要堅調 地方ならではの体験価値訴求 JNTOマニラ事務所 川村尚次長


航空券の販売を主とする銀行の旅行商品即売会では、連日購入を求める来場者で長蛇の列が見られる

航空券の販売を主とする銀行の旅行商品即売会では、連日購入を求める来場者で長蛇の列が見られる

 近年、フィリピンは消費水準も含めて市場全体の成長が顕著である。人口ボーナス期が2050年ごろまで続く見込みに加え、安定した経済成長も背景にあり、海外旅行需要も着実に拡大している。直近でフィリピン人海外旅行者数は約685万人に達し、2025年には海外旅行支出も約3579億ペソ(約9300億円)と過去最高を更新するなど、中長期的にも海外旅行需要の拡大が期待される有望市場である。

 こうした中、訪日需要も引き続き堅調である。2025年の訪日フィリピン人数は約88万人と前年を上回り、さらに2026年1~5月の累計でも前年同期比7.7%増と過去最高を更新している。特にリピーターの増加が顕著であり、4回以上の訪日経験者の割合は19年から25年までに11%上昇するなど、注目すべき動きである。

 また、現地での旅行動向にも変化が見られる。近年では、旅行会社による即売会に加えて、銀行が口座開設やカード加入、利用促進を目的に主催するトラベルフェアが各地で頻繁に開催され、航空券販売を軸としたイベントが活況を呈している。JNTOマニラ事務所もこうしたイベントに出展し日本行き航空券購入者145名にヒアリングを実施したところ、4回以上の訪日経験者が約7割を占め、その多くが家族旅行で、平均約3.2人での訪日という具体的な旅行スタイルも浮かびあがった。

 東京や大阪といった定番都市に加え、北海道の自然や雪景色、福岡の博多ラーメン等のグルメや名古屋周辺の家族向けのテーマパーク等、ゴールデンルート以外への関心も高まっている。加えて、体験型・SNS映えする観光施設や、冬季のアクティビティ、花畑、ショッピング、食といった個人の趣味を目的とする旅行等、目的の多様化も進んでいることがうかがえる。

 一方で、情報の偏りという課題もある。例えば北海道等は、認知度自体は高いものの、冬や雪、花畑といった特定のイメージに偏っている。その他、全国の各地域もその多様な魅力を十分に訴求しきれていない。また、広域周遊につなげるためのセットでの交通情報と観光情報も不足しており、潜在需要を引き出せていない状況が見受けられる。

 当事務所では、リピーター増加による市場の成熟化を踏まえ、地方誘客強化に資する取り組みを進めており、2025年11月にはメディア向けに地方観光の記事化を働きかけることを目的にセミナーを実施し、フィリピン人の興味関心が高い「雪」をテーマに東北のスキースポットや冬の祭り、アクセス等の紹介を行った。今後は航空会社やOTA、旅行会社などとの連携を強化し、地方の観光コンテンツやアクセス、具体的な旅行イメージの訴求を進めることで、地方ならではの体験価値を届けていきたい。

 2026年は日比国交正常化70周年という節目であり、観光交流を通じて相互理解を深める好機である。こうした取り組みにより、日本各地への誘客と交流の深化を図り、さらなる訪日促進につなげていく。

航空券の販売を主とする銀行の旅行商品即売会では、連日購入を求める来場者で長蛇の列が見られる

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