【創刊3000号に寄せて】観光経済新聞社社長 積田朋子


観光経済新聞社社長 積田朋子

報道の使命を果たし、観光業界に貢献

 小社はここに、創刊3千号を迎えることができました。観光業界の多くの方々に支えられて3千号の紙齢を刻むことができましたことは、何よりも読者の皆さまの支持によるもので、まず感謝の意を表したいと存じます。読者は情報の受信者であるだけでなく、発信者であり、共感者であり、助言者でもあります。多くの優れた読者に恵まれたことが今日に至ったことであると痛感しております。

 小社は1950年(昭和25年)に創業し、創刊千号(76年12月11日号)、1500号(87年10月3日号)、2千号(98年6月13日号)、2500号(09年1月24日号)と発行を続けてまいりました。

 新聞事業は報道機関として社会性を踏まえると同時に、適正な利益を求めながら、持続し発展しなければなりません。自力で採算ベースに乗せるためには、読者の支持を得なければなりません。そして多くの読者を背景に、世論を形成しなければなりません。新聞社は社会的評価の割に企業として見た場合、規模が小さいといわれます。しかし、業界の中で大きな影響力を持つという点では基幹産業に決して劣らないと思います。専門紙が業界の財産として、その力を発揮しなければなりません。そしてその鍵は読者の支持にあると思います。

 12年(平成24年)5月、「観光立国の実現」に情熱を傾けた江口恒明社長が逝去し、経営をバトンタッチされました。会社のかじ取りは苦悩の連続でしたが、多くの方々の励ましで、こうして3千号を迎え、今は感謝の気持ちでいっぱいです。

 江口前社長は61年(昭和36年)、編集長として現在の観光経済新聞社(当時=旅館新聞社)に入社し、専務を経て74年4月、社長に就任しました。モデルケースのない観光分野の報道機関として、倫理性を保ち、あくまでも自主運営を模索しつつ新聞を発行。若さと人一倍の健康体を駆使し、また生粋の軍人だった御父上の「やると思ったらとことんやれ、信念を貫き通せ」という一貫した精神教育に沿い、観光業界の真のトップ紙を目指し、抜本的な経営改革、紙面刷新を断行しました。

 旅館業界の悲願だった特別地方消費税の撤廃については業界一丸となったキャンペーンを展開し、運動資金集めに寄与し、99年度の撤廃に持ち込み業界専門紙としての地位を確個たるものにしました。

 また、小紙コラム「観光指針」とともに、署名入りの「いま業界の中で」は多くの読者の支持を得、実に連載1177回を数え、「是」は「是」、「非」は「非」の姿勢を貫き、観光業界発展のために健筆をふるいました。

 国内旅行市場活性化のためには、旅行業と旅館・ホテルの真の一体感が欠かせないとの信念のもと、過剰な手数料で旅館に圧力をかける旅行業には痛烈な論調を展開し、旅館業界の声なき声を代弁し、また一方で、旅行業の存在も高く評価し、現在も続く、JTB、KNT―CTホールディングス、日本旅行、東武トップツアーズの大手旅行業4社のトップを集めた新年号掲載の座談会は、故人なくしては実現しなかった企画だと思います。

 弊社主催、観光関連8団体と観光庁が後援する「にっぽんの温泉100選」「人気温泉旅館ホテル250選」は特筆すべき事業であり、温泉地、旅館・ホテルのブランド化に大いに貢献したものと自負しています。

 日本が「観光立国」の実現へ並々ならぬ熱意を示す中、それを語る上で欠かせないのが二階俊博衆院議員(自民党幹事長)です。江口前社長は90年、当時運輸政務次官だった二階氏にインタビューし、その場で意気投合。以後、政治家とマスコミという立場を超えて観光立国へ二人三脚で邁進(まいしん)し、08年に観光業界の悲願だった観光庁創設を果たしました。

 03年、小泉首相(当時)の主導で「ビジット・ジャパン・キャンペーン」がスタートし、06年は観光立国実現を目指した「観光立国推進基本法」が成立。訪日外国人旅行者の拡大が国の方針に織り込まれました。

 その後、リーマン・ショック、東日本大震災などでその数は伸び悩みましたが、12年に安倍政権のもと、観光が国の成長戦略の柱に掲げられ、査証(ビザ)の緩和、免税品の免税範囲の拡充と手続きの簡素化が進み、18年は訪日外国人旅行者数が3119万人となり、旅行消費額も4兆5千億円と日本経済をけん引。今、観光は地方創生の切り札となっています。

 来年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。小社はこれを契機に、地方創生に向けて観光客の受け入れ態勢に一層磨きをかけるよう紙面で啓蒙していきます。

 新たな時代を迎え、新しい潮流が台頭する中、小社も越えなければならない多くのハードルを抱えています。

 求められるのは「新聞力」の強化です。真実を掘り起こす力、解説力、提案力。ジャーナリストはものごとを大きな視野で捉えるとともに、読者目線が必要です。

 「ネット革命」により、新聞社も既存のビジネスモデルからの転換が迫られています。その一つが「新聞とネットの共存、融合」です。小社は新たな媒体として「電子新聞」と「ウェブサイト」を発行・運営していますが、今後も新聞の強みとネットの強みを融合させた、新しいメディアの可能性に挑戦していきます。

 小社はこの、創刊3千号という大きな節目に、報道の使命を再確認するとともに、今後も観光業界発展のために重責を果たしてまいります。

観光経済新聞社社長 積田朋子

 

 
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