【体験型観光が日本を変える341】客から選ばれる宿になるには 藤澤安良


 3月に入り、東京は幾分か日差しに温もりを感じられるようになったが、天気予報は日本海側の各地は雪の予報が相次いでおり、春はもう少し先になりそうである。
 国会では政治資金記載漏れなのか、裏金なのか、与野党の攻防が続いている。そんな中、能登半島地震から2カ月が経過し、インフラの復興ができていなかったり、仮設住宅の建設が進んでいなかったり、復興どころか、日々の生活にも苦難と課題が山積している状態である。

 このような事態は阪神淡路、東日本など地震災害を何度も経験している日本であり、国政は経験を生かした対策を怠ってきたと言われても仕方がない。

 3月16日に北陸新幹線が敦賀まで延伸し、「北陸応援割」が1月末に発表されたが、その具体的な内容や詳細のアナウンスがマスコミの露出も含めて不足している。

 また、宿泊施設に避難している人も少なくないなど、受け入れ態勢が万全でない石川県へはその効果が危ぶまれる。4県一斉でなく連休明けでもいいのではと思いもする。

 1~2月の観光動向は株価の値上がりとは連動せず、芳しくない。地方はコロナ後の立ち上がりが良くない。

 高度経済成長下では、職場、職場の仲間、家族、町内会、社会的な活動グループ、同業者の視察、家族や仲良しグループなど多岐にわたっていた。

 しかし、バブル崩壊後、さらに新型コロナ禍後は家族や気の合う仲間などに限られてきている。義理や付き合い旅行はなくなってきている。また、保険、年金、貯金などに絡んだ団体旅行も激減している。

 したがって、いまは宿を開業してもお客が来る時代ではない。お客から選ばれる宿にならなければ成り立たない。

 現在は3セクや公設民営で指定管理などの宿泊施設は苦戦していたり、営業が休止中であったり、廃業に追い込まれたりと残念な状況が少なくない。維持のために、指定管理料を施設から徴収するのではなく、逆に財源を投入し運営を委託している自治体も多い。雇用や地域経済はあるものの、地方自治体にとってお荷物になっている。

 課題は何か。宿泊経営のノウハウがない。地産地消や地域経済と連携できていない。仕入れが理念なき利益優先の納入業者任せで、理念なき料理人が多い。さらには宿泊の目的提案、誘客のノウハウ、プロモーションも足りなかったり、できていない。宿泊料金も変動型にせず、通年同じである。マーケット動向に的確に対応していないなど、課題が山積している。

 それらができなければ、誘客ができるはずもない。現在数軒の宿にアドバイスしているが、それらの課題に立ち向かえば、いずれも1~2年で黒字転換が図れている。これらの課題解決には崇高な理念と行動力なしには成し得ない。

 地方行政は、マンパワーが不足している中では後回しにされがちであるが、ここで、コロナ後のスタートダッシュをかけるべき時である。決して諦めてはならない。前向きに立ち向かうところが、選ばれない宿から選ばれる宿になる。

 
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