【体験型観光が日本を変える 81】防災に体験型学習を 藤澤安良


 7日、テレビの画面では、西日本を中心に「これまでに経験したことのないような大雨で最大級の警戒が必要」とした大雨特別警報などのニュースが流れた。死者と安否不明者で100人を超える甚大な被害をもたらした。インタビューで被災住民の方々は「70~80年生きているが初めてだ」と口をそろえた。

 2004年10月、京都府舞鶴市で観光バスの屋根の上で体半ばまで水に浸かりながらも、9時間ぶりにヘリで37人全員が救出された映像が脳裏に浮かんだ。14年8月には、広島市安佐南区を中心とした「数百年に1回程度よりはるかに少ない確率」で発生した線状降水帯による記録的集中豪雨で77人が犠牲になった。15年9月には、記録的な大雨で茨城県常総市の鬼怒川の堤防が決壊し大きな被害が出た。昨年7月の九州北部豪雨でも福岡県朝倉市や大分県日田市などで40人の死亡が確認され、2人が行方不明になっている。

 これらの大災害と今回の大雨特別警報が西日本では地域が重なっている。土石流に加えて人工林の杉などの多くの倒木の流出が見て取れる。治水対策として建設されたダムの貯水量が決壊寸前となり、治水どころか普段より数十倍も多い毎秒千トンも放流するなど、過去にもダムにより氾濫や決壊が起こった河川もある。

 人工林の間伐などの手入れ、広葉樹林への転換が必要とされて久しいが、これだけ水害が起こっても遅々として進まない。森林間伐などの人工林の手入れを体験プログラムとして多くの地域が整備しており、学校教育や企業研修、CSRでの活用を促したい。

 「経験したことのないような大雨」なので、経験が生きないことになる。気象庁や自治体が、警報や避難勧告あるいは避難指示を出しても、たぶん大丈夫であろうと、身を守る行動に移せていないこともある。家屋が倒壊しても、命が助かればやり直せる。自らの命を守る意識と行動が希薄になり過ぎている。

 大雨洪水の被害は今回のように山間地のみで起こっているのではない。その降水量の集積により海の近くの人口が多い広島県坂町や岡山県倉敷市など下流域で浸水家屋が多くなっている。交通の利便性や住環境のみならず、下流に住む人がその水源地までを訪ね、自分の住む環境を大局的に理解することも必要ではないかと考える。トレッキングやカヌーにより、山、森、田畑、河川など海まで続く水の流れを旅して、自然環境や森林保全について行政に任すだけではなく、国民の意識の中に深く刻む機会にしなければならない。

 そんな教育をつかさどる文部科学省の官僚が公金利用の裏口入学問題の容疑で逮捕されるという、前代未聞で今でもあるのかと耳を疑う事件が起こった。大学トップとの取引とあっては、またもや大学はどうしてしまったのか、教育や正義はあるのかと思う。自己保身や特定の利権が横行するようでは情けない国である。災害対策と防災意識に力を入れ、守るべきは国民の生命と財産であると肝に銘じなければならない。

 
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