【体験型観光が日本を変える 73】今、体験型観光に動く時 藤澤安良


 南北首脳会談が行われるなど朝鮮半島情勢が動き、北朝鮮と米国の首脳会談が6月12日に開催が予定され、米国人3人が北朝鮮から解放された。歴史的な事柄が次々に起こり、変化している。日本も拉致家族の解放などに結果を出してほしいと期待している。

 そんな中で、国政では不祥事や疑念で混乱が続いている。そんな場合ではないはずである。私も年間に数百人に及ぶ自治体関係者にお目にかかり、お話しをする機会が多い。頭の良くない私でも、相当数の人物を覚えている。さもなければ、仕事が進まないし、うまくいかないからである。頭脳明晰(めいせき)の官僚が、記憶がなかったり、曖昧であったりなどとは、釈然としないのは私だけではない。

 地方には課題が山積している。過日も、4日間で地方の10市町村の35人の地域振興や観光振興の担当者と面談した。悩みや課題は何かと尋ねたら、何から話せばいいのかと頭を抱え、考え込む。過疎高齢化と人口減少に歯止めがかからず、とりわけ働き盛りとも言える30~40歳代が少ない。つまりは、何か事を起こそうとしてもマンパワーが足りないとの嘆きである。

 定住人口の拡大は大命題であるが、その年代に一番必要なことは、空気や緑や水などの良さよりも生活の糧をどうして得られるのかが優先される。仕事があるかないか、生活するに足りる収入になるかどうかである。交流人口の拡大こそがその糸口となる。体験交流型の観光振興に他ならない。訪日外国人が増え続けている。首都圏や京都、大阪では宿が足りなく、宿泊料の高騰もある。6月15日に民泊新法が施行されるが、大阪は現在、不法民泊が1万軒と推定されている。学校や就労ビザがない外国人が住み着いて、飲食店で働いていると証言する都市もある。経済効果でルールを無視することがあってはならない。

 今こそ、観光誘客の流れは、都市から地方(田舎)である。日本人も知らないところに日本の良さや価値が見いだされたりしており、外国人の観光動向から、日本人が学び気づかされることも多い。体験型観光は飲食・宿泊施設のみならず、体験プログラムインストラクターやガイドにも労働の対価が支払われることになり、雇用の場となる。

 軌道に乗るまでの期間は資本が必要になる。売れて儲かる体験プログラムの整備やリピーターが増えるインストラクターなどの人材育成、マーケットへの情報発信、飲食・宿泊・物販施設のグレードアップ、農山漁村民家ステイの受け入れシステム、空き家や古民家の有効利用、体験型観光を扱うコーディネート組織づくりとその人材育成が必要不可欠の仕組みである。

 私はそれを22年間やってきたのだが、自前で運営できるところまで、国や行政が金銭的な援助をする必要がある。住民票が少なくても、地域に滞在する人口が増えれば、活気と経済が起こり、職が発生し、定住人口拡大につながる。日本人も行かないようなところに外国人は行く時代になった。今動く時である。

 
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