【体験型観光が日本を変える 58】地方の外客対応 期待 藤澤安良


 日本が氷点下に近づく中、クリスマスイブの夜、成田発で地中海のマルタ島に出かけた。イタリアが蹴ったボールのシチリア島の先に飛び跳ねた滴のような小さな島国である。日本の1市町程度の面積に43万人が住んでいる。気温は17~22度と温暖な地中海性気候でこの時期としては過ごしやすい。日本からの直行便はなく、イスタンブール経由で15~16時間と結構な長旅である。

 食事はイタリアが近いだけあって、パスタやピザかメニューに並ぶ。治安もよく、物価もさほど高くなく、旅行しやすい国である。しかし、往復の航空機を含めて出会った日本人は、ツアー客も見かけず、30人未満と少ない。中国人も、韓国人もほとんどいない。ヨーロッパや中東からの観光客が多い。

 中世にかけて、オスマントルコとキリスト教騎士団が戦いに明け暮れた歴史の中で、多くの教会やそれを取り囲む城郭などの歴史的建造物が世界遺産となっている。大きさで言えば、あらゆる街に長崎の大浦天主堂クラスの教会がある。中でも首都バレッタの聖ヨハネ大聖堂は、外観はシンプルだか、内部は大きく、豪華な装飾品や絵画で飾られた9室の金色に輝く礼拝堂が設けられている。日本の戦国時代に相当する時期の建造物であることから技術と財力がいかばかりであったかと感動のシャッターを切る。古い町の建造物や狭い通りは、重厚感がある石造りで趣と歴史観がある。

 団体ツアーではない旅では、観光地に行く手段が大変なのだが、島の主たる所に向かうには路線バスが便利である。1回の運賃がどこまで乗っても1・5ユーロ(約200円)とありがたい。首都バレッタから約1時間の古都イムディーナへも同額である。

 しかし、そのバスもクリスマスには勝てない。地元の人には知られているらしいが、25日は一定の時間帯、すべてのバスがストップした。張り紙も、アナウンスもなく、旅行客は右往左往するばかりであった。次の日は正常運転と言いながら、予定時刻にバスが出発しない。乗客が運転手に催促すると、悪びれた様子もなく、15分遅れで出発した。時刻を気にしない状況はあちこちで見られた。

 また、1日数千人もの客が訪れる観光地の公衆トイレ2カ所で行列ができている。水の流れも悪く、トイレ事情は決して良くない。

 日本の交通機関や観光地事情の良さが際立つことになる。食事も日本ほどバリエーションがなく、日本に勝る国はない。初渡航地なので中4日間では主な観光地を回るのでいっぱいである。しかし、次回なら、数多くある体験アクティビティ、博物館や美術館などに時間をとりたいと思う。つまりは、訪日外国人も東京、富士山、京都、大阪を訪問した次には、地方都市や体験アクティビティに移ることになるはずである。2018年は、生活習慣やルールの違いなどで混乱が生じないような情報提供や体験プログラムの整備など、周到な準備をして、地方での外国人観光客の受け入れが進むことを期待したい。

 
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