【体験型観光が日本を変える 129】日本一標高の高い宿 体験教育企画社長 藤澤安良


 日本の現代文化ともいえるアニメーションの制作会社が放火され、死者34人、重軽傷者34人を出した悲惨な事件は、瞬く間に全世界に届き震撼(しんかん)させた。犠牲者の冥福と快復を祈るばかりである。

 建物構造や危機管理体制は十分に検証されるべきであるが、そのような非人道的な行為に及んだ加害者の動機と生活と精神背景を解明しなければ真の再発防止はできない。

 このところ、常人では理解しがたい行為があまりにも多い。現代社会の問題にも目を向けなければならない。政治の責任が問われることになる。

 参院選は有権者の選択の結果である。しかしながら、議員の公約と言動が選挙用で一過性のものと終わる歴史が繰り返されてきた。今こそ、国民に幸福に合致しないような政党の論理を優先することなく、国民本位での政治活動を期待したい。

 首都圏、東海、関西などの3大都市圏と地方との格差は広がるばかりで、人口のみで算出した議員定数が県をまたいだ合区までつくる結果となった。地方は人口減少に拍車がかかり、労働力不足は深刻な問題となっている。高度経済成長の時代の公共施設の運営も厳しい状況である。

 そんな中で私がお手伝いをしている施設がある。南信州に南・中央・北アルプスを望む360度の大パノラマ、標高は1918メートル、車で行ける宿では日本一標高の高い所にこの宿がある。晴天の夜空は満天の星でいつでも天の川が見える。7月に改称・開業した地域の経済拠点施設である、しらびそ高原「天の川」である。

 全国的に宿泊業界で難題の地産・地消化にあえて取り組み、地元産、広域産、県内産までの範囲の食材で食事提供をすることとした。外国産や出来合いの総菜類を使わないとすると、料理人も食材の吟味と調達にも苦労が絶えない。農林業の食料生産者とつながりをつけて、地域ぐるみでの仕組みづくりが必要になる。

 売店の商品も、原材料が地元産や国産の範囲で選定し、外国産を排除したが、残念ながら全商品の2割程度となった。外国製品の品ぞろえより、大切なのは地域の「鮮度・労力・知恵・技・巧」の付加価値ある野菜、山菜、キノコ、穀物、民芸品などを商品とするコーナーの設置こそ田舎の価値である。

 肝心の集客も、宿を開業したら客が来る時代は終わり、宿泊するに値する目的提案が不可欠である。高地である魅力は星空もアルプスの展望も素晴らしいが、景観だけではなく、あらゆるガイドツアーや体験プログラムなどの提案が必要である。

 そのコンテンツは、シラビソの原生林の樹林帯を抜けて尾高山(2212メートル)頂上からは赤石岳が間近に望める登山や、日本初の隕石(いんせき)クレーターに認定されたその地形を望む御池山(1905メートル)トレッキングがある。

 何しろ玄関からの出発ゆえに標高差約300メートルであったり、ピークは宿より低いなど標高差も少なく、初心者でも2千メートル級のトレッキングが十分楽しめる魅力いっぱいの宿である。ぜひ訪れてほしい。

 
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