【口福のおすそわけ 505】テフロン VS ブロンズ 竹内美樹


 テフロンか? ブロンズか?…って、鍋のことではない。パスタである。

 そもそもパスタとは? 一般社団法人日本パスタ協会によれば、「パスタとは、小麦粉と水を練り合わせて作られた食品のこと」とある。その種類は500種以上といわれる。大きく分けて、スパゲッティに代表されるロングパスタと、マカロニに代表されるショートパスタがある。原料は硬質のデュラム小麦を、セモリナ(粗びき)にした粉。

 生でなく、乾燥パスタの場合、デュラム・セモリナと水を混ぜて練った後、生地を「ダイス」と呼ばれる、穴がたくさん開いた金型に入れ、押し出して成型する。金型の穴の形を変えることで、さまざまなパスタができる。コレが冒頭のお話。ダイスには、テフロンとブロンズの2種類があるのだ。

 昔からあるのが、ブロンズダイス。その名の通りブロンズ製、つまり青銅で作られたダイスである。ダイスから押し出される時、摩擦によってパスタの表面に小さな凹凸がつき、ザラついた仕上がりになる。押し出された生地を乾燥させる際は、低温長時間でないと生地が崩れてしまうので、手間のかかる製法だ。

 一方、テフロンダイスは、テフロン加工が施されたダイスだ。20世紀前半に開発されたという。テフロン加工の鍋がくっつかないのと同じで、ダイスからするっと生地が抜けるため、パスタの表面がつるっとした仕上がりになる。高温短時間での乾燥も可能なので大量生産向きだ。この製法が生まれたことで、パスタが世界中に普及したといわれており、開発したバリラ社は、イタリアのパスタメーカーの中でシェアナンバーワンを誇る。

 伝統的なブロンズの方が良いように思えるが、必ずしもそうとはいえない。ソースや作り方、好みによっても違うからだ。パスタ自体の特徴は、ブロンズの方がザラッとしてソースが絡みやすく、食感はモチモチ。低温で乾燥させるため、小麦の香りも強い。テフロンの方は、つるんとして喉ごしが良く、アルデンテの状態をキープしやすい。

 今まで、パスタの形状とソースとの相性しか考えていなかったが、テフロンかブロンズかによっても、合うソースが変わってくるのだから、パスタの世界は奥が深い! ちなみに、最近はやりのひと鍋で作る「ワンパンパスタ」は、テフロンの方が向いているそうだ。パスタをソースで煮込んでしまうので、ブロンズだとソースに小麦粉が溶け出して、とろみがつき過ぎる傾向があるようだ。

 スーパーにもあるテフロンの代表が先述のバリラ、ブロンズはディチェコ。国産ブランドも負けていない。パスタに切り込みを入れゆで時間を短縮した上、アルデンテに仕上がる商品も! 髪の毛1本分の芯を残すアルデンテ、戦後はまだ珍しかった。原料も強力粉から、今では全てデュラム・セモリナに。日本のパスタの進化はスゴイ。

 さぁ、次はどんなパスタとどんなソースを合わせようかな? 楽しみぃ~♪

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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