【体験型観光が日本を変える 112】8年面の3・11に思う 体験教育企画社長 藤澤安良


 東日本大震災から8年目の3月11日を迎えた。いまなお約5万2千人が避難生活を余儀なくされている。道路や防潮堤などの整備は進んでいるが、住民生活の面では復興半ばである。海岸線の基幹産業である漁業や、その食品加工業など、失った船や流失した工場などの再建に必要な財源と用地と労力の確保など課題は少なくない。

 被災者それぞれに体験と物語と課題が残るが、皆に合致する援助があるはずもなく、それぞれの実情に寄り添い、合わせた政策が求められている。

 観光振興の面でも、旅行会社のツアー設定や、被災地訪問と震災学習を大義とした修学旅行などで、被災地を応援しようという機運が薄らいだようにも思える。

 平和学習は戦後74年を迎えた今も続いている。防災学習も命を守る重要な平和学習であり、忘れることなく続けてほしいものである。

 過日の報道によると、全国の延べ宿泊人数は5億902万人と対前年微減であったが、外国人は8859万人で史上最高を記録した。増加が著しい地域は依然として三大都市圏と人気の北海道と沖縄であるが、地方の一部も増えている。

 直接の被災地ではないが、青森県や山形県などが増やしている。どの地方も諦めることはないが、アピールしなければ事は始まらない。雄大な自然や神社仏閣、名所旧跡がない地方は、体験交流型のプログラムが有効である。日本に対する先入観をあまりを持たない外国人の、日本人とは違う感性から火が付く場合もある。チャンスは全ての地域に存在する。

 人口減少が著しい地方では、マイカー時代の中で公共交通機関の廃線や減便との闘いである。拠点から目的地までの2次交通は大きな課題である。政府は自家用車を使って有料で観光客を輸送することを可能とするよう法改正するという。詳細は後に譲るとして、送迎付きの体験型観光やオプショナルツアーの設定と販売に大きな可能性を持つことになる。現場の実情に寄り添い、有効に機能する法改正であってほしいものである。

 体験交流型観光の三種の神器を得るための、三つの課題をクリアしなければならない。

 一つは地元の自然、歴史文化、産業、伝統工芸、味覚などを生かした体験プログラムの整備。今月はすでに全国各地で4回、講座を実施している。二つ目はそのプログラムを動かすガイド、インストラクター、ファシリテーターなどの人材育成。商品としてプロモーションし、誘客販売し、機能させる組織である。三つ目はコーディネーターの育成だ。

 現在30社の役員やアドバイザーとお付き合いをしているが、組織をただ作ればいいというわけではない。組織任せではなく、運営財源や人材の確保も事務所などの環境整備も、行政と一体となって活動するところが業績を伸ばしている。体験交流が地域振興、地方創生への「SDGs」となるはずである。

 
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