【交通トレンド分析72】コロナ渦初の航空会社撤退 航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗


 10月5日の月曜日、国内LCC(格安航空会社)であるエアアジア・ジャパンが国土交通省に対して12月5日をもって全路線を廃止することの届け出を行った。エアアジア・ジャパンは楽天、ノエビア、アルペンなどの企業が出資し、2014年7月に設立された。中部国際空港(セントレア)を拠点に2017年10月29日に中部―新千歳線、2019年2月1日に初の国際線路線として中部―台北線を就航。さらに2019年8月8日には中部―仙台線、今年8月1日に中部―福岡線を就航したことで、国内3路線、国際1路線の4路線を運航していた。

 しかし、新型コロナウイルスによる利用者低迷によって4~7月までの約4カ月間は、全路線、全便で運休に追い込まれた。8月に中部―福岡線が就航し、残りの国内2路線の一部便で運航を再開したが、9月の4連休を最後に10月24日までの夏ダイヤ期間中の全便運休を決めた矢先での全路線廃止発表だった。

 当初からエアアジア・ジャパンは苦難続きだった。想定よりも事業認可が遅れたことで、就航も後ろにずれ込み、機体の納入も予定通りに進まなかった。エアアジア・グループのトップであるトニー・フェルナンデスCEOは、以前からインタビューのたびに日本の航空局に対して希望通りに運航に必要なさまざまな認可が降りないことに不満を持っていた。それでもセントレアを拠点に少しずつではあるが、路線を拡張してきた矢先の新型コロナウイルスの発生となった。

 日本マーケットだけではなく、主マーケットの東南アジアでも大幅に利用者が減少し、エアアジア・グループ全体の収益も大幅に落ち込み、海外事業の見直しが迫られた。その中で黒字化が見通せない日本マーケットから撤退することを決断した可能性が高い。

 エアアジア・ジャパンは最初、ANA(現在はANAホールディングス)と手を組み、国内LCC元年といわれる2012年に初代エアアジア・ジャパンとして運航を開始したが、ANA側との経営方針や運営方法の違いで対立したことで、運航開始から約1年数カ月で合弁を解消した。その後、現在の2代目エアアジア・ジャパンでは楽天などと手を組み、既存の国内航空会社とは手を組まない形で再設立された。だが、今回は会社設立から約6年、運航開始からわずか3年で運航終了となった。

 今後は、新型コロナウイルスによる入国制限が緩和された後、マレーシアのクアラルンプールやタイのバンコクなどのエアアジアXやタイエアアジアXの日本路線を再開する方針となっている。

 (航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)

 
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