【ポスト・コロナ時代に向けた宿泊施設の取り組み41】緊急事態宣言発出期間中の前回と今回の旅行マインドの変化(4) 観光品質認証協会統括理事・サクラクオリティマネジメント代表取締役 北村剛史


北村

北村氏

 2020年全世界を恐怖の底に落とし込んだと同時に経済的にも大打撃を与えた今回の新型コロナウイルスも、1年というスピードで各国からワクチンが出そろうとともに、効果が見込まれる既存薬の使用の他、新たな人工抗体の開発も進んでおり、この人類が一丸となった取り組みにより収束に向かう気配がようやく感じられるようになってきました。いよいよこれから平常時を前提とした新たなマーケットに向けた経済活動再準備が求められます。

 再開に先駆けて、今後の新たなマーケットニーズに関するアンケート調査結果をご紹介したいと思います。今回のパンデミックは、「ウイルス」の存在、その脅威をいやという程感じさせられました。今回のウイルスは遺伝子にRNAを持ち、それ自体が人間等の宿主細胞内でタンパク質の合成を行い増殖するというものでした。この「RNAウイルス」は人類にとって当面大きな脅威であり続けるはずです。今回のパンデミックが「収束」し、新マーケットが再開したとしても、その脅威に正しく対応していく必要があるはずです。そこで、前回の緊急事態宣言期間中と今回のそれぞれの期間中に行った感染症対策に関するニーズ調査とその変化をご紹介します。

 まず、様々な感染症対策について、どれほどマーケットが重視しているのか、またその結果について、前回の2020年5月から今回の2021年1月調査結果における変化について見てみます。

 まったく両時点で同じ設問を使用し、全国の男女200名に対するインターネットアンケート調査を行いました。その結果、「大変重視する」及び「重視する」人の合計割合では、総じて昨年5月よりも総じて増加しています。客室消毒について見てみます。「客室・バスルームにおいて、人が良く触る箇所(リモコン、デスク上、空調パネル、ドアノブ等)は除菌消毒拭き上げ作業を丁寧に行っている」について、ビジネスホテルでは77%(対2020年5月調査変化+5.5%)、シティホテル79%(同+4.5%)、リゾートホテル80%(同+1.5%)という結果でした。一方で、追加料金を許容するとの回答割合を見てみますと、ビジネスホテル58.5%(同△4%)、シティホテル54%(同△6%)、リゾートホテル50%(同△9%)という結果でした。また追加料金を許容すると回答した人だけみた平均追許容額(円/室)を見てみますと、ビジネスホテル554円/室(同△41円/室)シティホテル593円/室(同△9円/室)、リゾートホテル652円/室(同△28円/室)という結果でした。

 上記調査結果を俯瞰しますと、以下のようにまとめることができます。

 ① 前回2020年5月の緊急事態宣言期間から、今回の2度目の緊急事態宣言にかけて、感染症対策の実践を重視しており、それはウイルスの脅威を勘案しますと、今後も同様に重視されるであろうとことが予想されます。

 ② 追加料金を許容する人の割合が低下するとともに、付加価値平均額も(今後も見込まれるものの)、徐々に低下するものと予想されます。

 感染症対策の実践は高い水準で重視されつつ、その取り組みは、付加価値として収益性を補うのではなく、長期的には安心感の提供を通じて、宿泊施設の根幹の「品質」となり、顧客満足度に影響を与えつづける可能性が高いものと考えられます。

一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史

 
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