【ポスト・コロナ時代に向けた宿泊施設の取り組み35】感染症終息後を見据えた取り組み事例 観光品質認証協会統括理事・サクラクオリティマネジメント代表取締役 北村剛史


北村氏

 2020年12月には詳細が不明な新型変異種が新たに世界に広がり、また国内においても依然として猛威を振るう感染症対策の強化策として、12月28日から1月末まで全ての国・地域からの入国を停止することになりました。一方では、人類初となる遺伝子ワクチンの供給もスタートしています。そのような環境において、今回は、一時的な「対策」ではなく、中長期的視点にたって「戦略的」な感染症防止対策構築を目指す、関東圏に所在するリゾートホテルにおける感染症拡大防止対策の取り組みをご紹介したいと思います。

 まず、「戦略的」感染症対策の構築には、「正しい知識」が欠かせません。その後に「意識」の変革と「行動」及び「組織」の改革を進めています。「正しい知識」については、以下の内容を感染症対策チームで習得し、その後徐々に組織内に浸透させています。(1)ウイルス一般及び新型コロナウイルスの特徴に関する知識→対策の基礎を知る。(2)どのように細胞に感染するのか(感染機構)に関する知識→重症化リスク、罹患リスクを知る。(3)感染症の特徴に関する知識→正しく恐れる、感染リスクを知る。(4)感染経路に関する知識→効果的な感染症拡大防止対策を構築する。(5)消毒メカニズムに関する知識→正しい消毒作業を実施する。(6)館内各所の感染リスク評価を行う→戦略的な感染対策を実施する。(7)リスクレベルの設定を実施する→リスクレベルに応じ適切な対策を実施する。(8)第三者機関によるインスペクションチェックとフィードバック、(9)最新情報を更新する→効率的且つ効果的な対策を追求する。

 (5)の消毒メカニズムを知り、例えばエタノールではアルコール濃度ではなくエタノール濃度70%以上を適切に使用し、消毒対象物に適切な距離で噴霧を行い、往復拭きを行わないよう徹底します(その後乾拭き)。(6)感染リスク評価については、飛沫感染、接触感染、エアロゾル感染、糞口感染それぞれについて行います。特に飛沫感染では、マスクを外し会話する場所、密になる場所、大声を出す可能性のある場所を特定します。接触感染では顧客による接触頻度の高い部位を特定し、リスクの高低に応じて必要な対策を検討します。(7)リスクレベルについては、弊会の安全行動基準を準用いただいています。弊会では1週間の累計新規感染者が30名上あるいは感染経路不明罹患者が15名以上で、対策レベル最上位の取り組みを要求しています。当該ホテルの所在エリアでは、昨今経路不明罹患者が1週間の累計で16名となりました。その結果、客室消毒レベル、ロビーやフロントでの接客レベル、レストランでの対策レベル、バックヤードにおける対策レベルを「対策レベル2」から「対策レベル3」へ修正しています。さらに(8)第三者がインスペクションを行いチェックし、細部まで「対策レベル3」が実施できているかをチェックし、フィードバックを繰り返すことで改善を行います。今後、県内1週間の累計で新規感染者が発生するも、「対策レベル3」に該当しない場合には「対策レベル2」に再度調整し、また、国内で①新規感染者が発生且つ②県内では新規感染者が未発生となれば「対策レベル1」に調整します。最終的に国内で新規感染者が確認されない状況となれば感染症対策の原点となる「対策レベル0」に調整します。「対策レベル0」においては、最低限の飛沫感染対策及び接触感染対策を行います。今後の新型コロナウイルス感染症終息後を見据えた取り組みとして上記のような対策レベルを有することは、安全で安心な宿泊施設として強固な基盤を構築し、顧客との信頼関係をこれまで以上に強化する取り組みとなるのではないでしょうか。

一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史

 
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