【ニューノーマル 新常態の観光戦略 1】在日外国人をターゲットに 元旅行読売出版社社長兼編集長 神崎公一


 「10月の国慶節までは難しいだろうな」「来年2月の春節には期待したい」。ここ数年、外国人観光客、なかでも中国人でにぎわった全国の観光地やホテル・旅館などの関係者は、中国との渡航再開によるインバウンドの回復を心待ちにしている。

 それも無理もない。過去最多を更新した2019年の訪日外国人3188万人のうち、首位の中国は959万人と、2位の韓国558万人を大きく引き離し、日本の観光の“救世主”ともいえるからだ。しかも中国人観光客は外国人による旅行支出でも首位である。

 ところが、新型コロナウイルス感染症によって、中国はもちろん多くの国に対し入国制限が発せられた。その結果、3月以降、訪日外国人は前年同月比でほぼゼロの状態が続いている。

 訪日外国人はここ数年、右肩上がりで増加し、インバウンドバブルとも称された。外国人向けの施設やサービスを拡充し、一部の観光施設は外国人従業員の雇用を増やした。

 それがコロナ禍による大打撃。しかし、嘆いてばかりいても展望は開けない。

 筆者はコロナ禍以前から、インバウンドを増やすには、まず、在日外国人をターゲットにせよと主張してきた。

 私たち自身の海外旅行を思い描いてほしい。特にFITで外国を旅する場合、ガイドブックや観光局、インターネット情報などを利用する。しかし、旅先に知人、友人がいれば当然、彼らを頼り、情報を収集する。近年はネットの口コミ情報が欠かせなくなっている。

 中国ではもっと顕著だ。「中国国内のメディア情報より、Weibo(中国の有力SNS、ウェイボー 微博)の口コミを頼りにする」(中国旅行会社幹部)という。日本を旅行した人の書き込みも参考にするが、在日中国人の情報も重視する。その方が中身が濃く、正確だからだ。

 そこが「在日外国人をターゲットに」という理由だ。

 ここでも在日中国人は約76万4千人とトップで、福井県の人口と同じ規模だ。彼らを読者層として、中国語の新聞、週刊誌、フリーペーパーなどが多数発行され、日本旅行の情報なども掲載されている。ウェブでも展開している。

 筆者が夏前まで関係していた東京多摩にある遊園地よみうりランドでは、インバウンド対策として、こうした在日中国メディアを招いた取材会を2回開催した。東方新報、中文導報、半月文摘などが参加した。取材会後は、訪日中国人の来園者が増えた。半月文摘の関係者はこう解説する。「在日メディアは紙媒体だが、転用されたネット情報は中国でも閲覧され、日本旅行の参考になっている」。

 現在は外国からの渡航が制限されている。しかし、各種アンケートなどによると、解禁後は日本を訪れたいという中国人は多い。解禁を待っていては遅い。ウィズ・アフターコロナを見据えて在日中国人にしっかりアピールし、彼らを介して訪日中国人観光客の復活につなげることが必要なのではないか。

 (日本旅行作家協会評議員、元旅行読売出版社社長兼編集長)

 
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