【シニアマイスター経営の知恵 79】認知症社会とどう向き合うか 認知症予防ネット神戸 右京幸雄


 認知症高齢者の増加が今、国際的に問題となっている。わが国では、2012年に推計462万人であった認知症高齢者数が、2025年には700万人に達し、さらにMCI(軽度認知障害)とよばれる認知症前段階の人数も含めれば1300万人を超えると予想されている。厚生労働省は平成27年1月、関係府省庁と共同で「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を策定した。認知症に対する理解とその予防とが不可欠な社会となった。

 そんな世の中の動きに観光や宿泊産業はどう対応していくのか。認知症の客にヘルパーを帯同させるオーダーメイド旅行を企画する旅行会社もすでにあると聞くが、業界全体に認知症高齢者を受け入れるためのノウハウはあるだろうか。

 旅行・宿泊業界にとって高齢者は大切な顧客である。家族と一緒に認知症の人を介助・介護できる従業員のいるホテル・旅館なら利用の動機ともなろう。それにはハード面の見直しも必要だ。

 地中海周辺の国では比較的認知症発症率が低いことから、赤ワインやオリーブオイル、魚介類等を中心とした周辺地域の食事と認知症予防効果との関係が注目されている。ならば、ホテル直営のレストランで地中海食を楽しむ宿泊プランがあれば、国内で手軽に予防ができそうだ。

 簡単な暗算やしりとりなどで頭を使いながら体も動かす「コグニサイズ」と呼ばれる健康増進と認知症予防とを目的とした全身運動がある。それをホテル併設のフィットネスクラブで体験させてみてはどうだろう。

 認知症予備軍ともいわれるMCIは、放置すれば認知症発症へと進んでいくが、適切に対処し予防活動を継続すれば健常者に戻ることも分かっている。何かその支援ができないものか。

 私たち一人一人が日常的に認知症予防に取り組まねばならない時代である。観光や宿泊といった“非日常”の世界においても今後「認知症とその予防」が大きなテーマとなりそうに思う。

 (NPO・シニアマイスターネットワーク会員 NPO法人認知症予防ネット神戸賛助会員、右京幸雄) 

 
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