【コロナ禍を乗り越える 宿経営サバイバル塾 7】新しい事業構築を検討 全旅連ポストコロナ調査研究委員会


 当館はカテゴリーで言うとビジネスホテルに位置付けられる。新型コロナウイルス感染まん延を受け、地方都市で営業を続ける私どもも大きな影響を受けている。

 思えば2019年は、ここ最近でもインバウンド含め、あらゆる機運が高まり稼働率や売り上げも順調に推移をしていた。シティホテル、ビジネスホテルは数年前からイールドマネジメントが定着し、繁忙期は天井がないほどの高価格を設定。逆に閑散期はその3分の1に満たないような大きな値幅で商売をしてきた。

 結果、稼働が下がれば必然的にどのホテルも値崩れを起こし、負のスパイラルに入っていく。コロナ禍でも無休、24時間営業を続けるホテル業態は固定費がほぼ削ることができず、各種助成金も数カ月をしのぐために使用される延命治療にしかなっていない。

 当館は、以前から市場、商圏の強引な価格設定に合わせざるを得ない中でも、地元ファーストを心掛け「県民」が一番お得に泊まれる施策を実施してきた。季節波動が激しい中でも、県内宿泊者は一定数いることがデータで証明されていたからだ。

 宿泊特化型ホテルは思っている以上に足元である地元を見ていないケースが多い。コロナ禍でリモートワーク、出張、MICEなどの大型コンベンションも行く先が不透明だ。本来、ホテルに泊まり地元の飲食店や小売店にお金を落とすという「地域益」の影響も今後危惧しなければならない。

 当館には宴会需要の低下も顕著で、そもそも大切にしてきた交流人口も減りつつある。そんな中、コロナ禍で始めた長期宿泊の定額サービスは、非常に可能性を感じている一方でこのままでは、元に戻らないと考えている。

 今後は、供給過多の商圏市場を鑑み、長期滞在専用客室の増設や健康をテーマにした新しい事業構築を検討していきたい。

 元来、お客さまとのコミュニケーション、感謝の言葉をやりがいに生業をしてきた。このコロナ禍で本来の醍醐味(だいごみ)すら忘れがちになっていた。観光を日本の基幹産業に成長させるためにも、その本質を見失わず前向きなチャレンジをしていきたい。

 (委員・小林篤史=長野県松本市・ホテルニューステーション)

    ◇  ◇

 【委員会より】

 ビジネスホテルでは、出張需要が消失し、インバウンド需要の消滅とともにダメージを受けています。この環境下で再度、地元商圏の掘り起こしを検討するという視点は、重要な示唆に富んでいます。特に地方においては、感染拡大も落ち着いており、地元経済の立ち直りが期待されています。宿泊事業者がその一翼を担うことが期待されています。

 
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