【コロナ新時代への提言】三陸鉄道社長 第三セクター鉄道等協議会会長 中村一郎氏


中村社長

コロナ禍を乗り越える挑戦を

 三陸鉄道は、岩手県沿岸部を走っていた旧国鉄路線を引き継ぎ、第三セクター鉄道としてスタートした鉄道である。2011年3月の東日本大震災津波、19年10月の台風19号と2度の自然災害により、大きな被害に見舞われた。20年3月に全線復旧を果たし、これからと意気込んだ矢先に、今度は新型コロナウイルスが立ちはだかった。

 20年度の運輸収入は、新型コロナの影響もあり19年度対比で約55%だった。

 4~6月の落ち込みが一番激しかったが、7月から11月には「Go Toトラベル」事業などの効果もあり、徐々に利用客が回復しつつあった。だが12月以降、コロナ感染者の増加や緊急事態宣言の発出などにより、再び利用状況は低迷した。

 このような中、神社などの御朱印を集める御朱印帳の鉄道版といえる鉄印帳の取り組みが好調だ。昨年7月から全国の第三セクター鉄道40社で共同実施しており、20年度の販売状況は、40社全体で鉄印帳が約2万3千部、鉄印で約11万7千枚となっている。くま川鉄道の永江友二社長の発案でスタートしたが、各社でオリジナルの鉄印の作成、社長自ら毛筆を振るう会社、さらに鉄印帳ツアーの実施や鉄印帳紹介本の出版など、人気を呼んでいる。

 三鉄の鉄印は、沿線で一番の名所である大沢橋梁のスタンプ画に「三陸鉄道リアス線」と毛筆で社員が手書きしている。地元の宮古高校の美術部の生徒にデザインしてもらった鉄印も限定販売であっという間に完売となった。

 現在のコロナ禍にあって、他県からの利用客を呼びにくい状況にあることから、当面、沿線や県内の皆さんに、三鉄の利用を呼び掛けている。Go Toトラベル事業の県内版である「いわて旅応援プロジェクト」を活用し、プレミアムランチ列車や沿線駅―1グルメ旅というお得な企画を用意し、好評をいただいている。

 コロナの収束にはまだかなりの時間を要すると思われ、収束後も以前のような旅行に単純に戻ることはない。その中で、当社は、これまでの「楽しむ」旅行に加え、「学ぶ」と「健康」を新たなキーワードにした取り組みを考えている。

 「学ぶ」は、これまでの震災学習列車に加え、「海と希望の学校on三鉄」という列車を走らせる。後者は、列車に乗って、三陸の海や魚などを分かりやすく学んでもらう企画で、沿線の大槌町にある東京大学海洋研究センターの協力を得て取り組んでいる。

 「健康」は、三陸沿岸に整備されたみちのく潮風トレイルを歩くことや三陸沿岸を自転車で楽しむサイクリングと列車での移動を組み合わせた楽しみ方である。

 観光関係者にとっては、今が一番のこらえ時だが、ピンチはチャンス。この機会に、これまでの取り組みを見直し、新たなことに大胆にチャレンジするいい機会と捉え、進んでいきたい。

 
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