GREEN×EXPO2027が繋ぐ日タイの絆 双方向100万人超の人流、コラート国際園芸博覧会へレガシーをつなぐ


 日本政府観光局(JNTO)は9月24~27日に東京ビッグサイトで開催された「ツーリズムEXPOジャパン2026」の中で25日、インバウンドシンポジウムを開催した。テーマは「GREEN×EXPOが繋ぐ日タイの絆 2027年日タイ国交正常化140周年に向けた連携」。JNTO理事の若松務氏をモデレーターに、公益社団法人2027国際園芸博覧会協会の多田有紀彦氏(入場券部入場券課課長・広報報道部広報報道課課長・プロモーション企画部プロモーション企画課課長)、公益財団法人横浜市観光協会の河東宗平氏(Yokohama Discovery Group 課長・CMO)、タイ国政府観光庁の藤村喜章氏(東京事務所マーケティングマネージャー)の3氏がパネリストとして登壇した。

 シンポジウムでは、2027年春に横浜で開幕する「グリーンエキスポ2027(正式名称:2027年国際園芸博覧会)」を軸に、インバウンドプロモーションと日タイ双方向交流の可能性を議論。2025年の実績でタイから日本への訪問者が123万人、日本からタイへの渡航者が109万人と、両国間の人流がすでに双方向で100万人を超えていることが共有された。さらに2029年にタイ・コラートで次回の国際園芸博覧会(2029年11月10日~2030年2月28日)が開催予定であることを踏まえ、「2027年から2029年、そして2030年へと続くレガシーをいかに継承するか」が議論の核となった。

グリーンエキスポ2027、来年3月19日に開幕 会場は東京ディズニーランドとシーを合わせた広さ

 シンポジウムに先立ち、多田氏が基調講演でグリーンエキスポ2027の概要を紹介した。

 開催期間は2027年3月19日から9月26日までの192日間。会場は横浜市旭区・瀬谷区にまたがる旧上瀬谷通信施設跡地だ。国際園芸家協会(AIPH)と博覧会国際事務局(BIE)が認定する最上位クラスの国際園芸博覧会であり、1都3県では初の万博開催となる。

 会場の広さは東京ディズニーランドと東京ディズニーシーを合わせた規模に相当。成田空港から約130分、羽田空港から約70分のアクセス環境にある。会場直結の駅がないため、南町田グランベリーパーク駅(田園都市線)、橋本駅(JR横浜線)、西谷駅・三ツ境駅(相鉄線)の計4駅からシャトルバスを運行する計画で、乗車には事前予約が必要。9月18日よりシャトルバスおよび来場日時の予約受付がすでに開始されている。

 テーマは「幸せをつくる明日の風景」。会場内はカーボンニュートラルやネイチャーポジティブといった新たなグリーン社会の実現を掲げる企業によるビレッジ出展、テーマに合わせた飲食なども提供するテーマ営業出展、そしてファンワン・ロクートビレッジ、アーバン・GXビレッジ、クラフトビレッジ、里山ビレッジ、キッズビレッジの5つのビレッジエリアで構成される。

 主催者展示施設として設置されるのは3施設。「根っこ」(テーマ館)は生命のつながりを象徴する植物の根をイメージした建築表現を採用する。「いろは庭」(園芸文化館)は日本の伝統文化と庭園を掛け合わせた名称で、江戸時代の園芸文化の継承がコンセプト。「花巡り」(屋内出展施設)は大阪・関西万博のウーマンズパビリオンおよびドバイ万博日本館の部材を活用しており、万博レガシーの継承を体現する施設だ。

 日本政府苑では宮内庁所蔵の盆栽を展示予定。通常は海外からの賓客をもてなす際に披露されるものを間近で鑑賞できる、希少な機会となる。

 花の見ごろカレンダーも紹介された。開幕の3月中旬は桜をはじめ多彩な春の花が期待され、夏・秋にかけても異なる種類の花を楽しめる構成となっており、192日間を通じて繰り返し来場する動機となるよう設計されている。

 現在74カ国・5つの国際機関の参加が見込まれており、各国のナショナルデイ・国際機関のスペシャルデイが主要イベントとして予定されている。落合陽一氏が大阪・関西万博に続きプロデュースを担当し、神奈川県主催のミュージカルも開催される。

 入場チケットについては、当日料金が大人5,500円のところ、会期前日までの前売りであれば4,900円で購入可能。コンビニエンスストアでの販売もすでに開始されており、来場日時予約制度も導入されている。

 多田氏は「グリーンエキスポは花と緑だけではない。たくさんの国、国際機関が出展し、地球を一周できるような場でもある。1回とは言わず、2回、3回と訪れてほしい」と呼びかけた。

多田氏

横浜のインバウンド戦略 「他観光と組み合わせで行きたい」が73%

 続いて河東氏が、グリーンエキスポ2027を契機とした横浜のインバウンド戦略を講演した。

 横浜市観光協会は2022年に観光庁の登録DMOとなり、2024年に現名称へ変更。宿泊・飲食・交通・商店街・大学・マイス・スポーツ・ITコンテンツなど幅広い関係者をつなぎ、データ活用を通じて地域全体の成果を生み出す役割を担う。

 横浜市内の主要ホテルの平均稼働率は2025年に年間平均84.7%まで回復。一方、週末と平日の稼働差が課題であり、その解決の鍵としてインバウンド市場の取り込みが重要だと指摘した。

 2025年の横浜市内外国人宿泊者数は約96万9,000人で前年比2.9%増。ただし日本全国の伸び率9.4%と比べると横浜の伸びは限定的であり、「大きな伸びしろがある」と河東氏はポジティブに捉える。

 市場分析では、中国と米国の規模が大きく、オーストラリアが前年比プラス25%と目立つ伸びを示している。横浜を訪れる外国人旅行者の1人当たり平均消費額は約6万円と国内旅行者の約5.5倍。平均宿泊数は約5泊、立ち寄り箇所数は4.1箇所、75%が初めての来訪者だ。

 注目されるのが東京滞在インバウンドの動向だ。日本における訪日外国人旅行消費額約9.5兆円のうち約3.3兆円が東京で消費されている。東京滞在客のうち誰がどんなきっかけで横浜へ足を伸ばすか、今後さらに詳細な分析を進める方針を示した。

 人流データからは市場ごとの行動特性の違いも確認されている。米国は横浜市内の米軍基地周辺に反応が集中するのに対し、中国は中華街より横浜駅周辺、韓国は中華街や桜木町エリアに集中。台湾は山手を含む広いエリアに分散していることがわかっている。こうした特性をコンテンツ検討やデジタルスタンプラリーの設計に活用している。

 クルーズ市場についてのデータも共有された。横浜港は2025年にクルーズ船寄港回数で国内1位となった。独自調査(963件の回答)では、クルーズ乗船客の宿泊先として東京が約58%、横浜が36%という結果が出ており、横浜への宿泊転換余地が明確に存在する。宿泊の手配では旅行代理店やクルーズアドバイザーの影響が最も大きく、B2B流通を強化する必要性を指摘した。

 戦略の目的として河東氏が掲げたのは、横浜グリーンエキスポと横浜都心臨海部への「総合送客による観光消費額の最大化」だ。戦略は3段階で構成される。第1段階でグリーンエキスポの認知を広げ来場意欲を高め、第2段階で会場と都心臨海部をつなぎ宿泊・市内観光消費につなげ、第3段階で開催後も続く観光体験コンテンツの育成と横浜の観光ブランディングを進める。

 独自調査では、グリーンエキスポを旅行の主目的とする回答が12%にとどまった一方、「他の観光と組み合わせるなら行きたい」が73%に達した。この73%を実際の行動に結びつけることが戦略の核心と位置づける。

 具体的な施策の方向性は5つ。OTAプロモーション、ナイトタイムエコノミーの促進、メディア・インフルエンサーを活用した旅前情報発信、旅中プロモーション、観光マイスブランディングだ。

 OTAプロモーションでは、花や緑への関心が検索・比較・予約の過程で途切れないよう統一したクリエイティブを展開し、エキスポ入場券と宿泊を組み合わせたパッケージ商品の造成も進める。夜間施策では、昼間の来場後に日本新三大夜景、クラフトビールの街横浜、花火など横浜ならではの夜の体験をつなげ、宿泊を促進する流れを作る。

 旅中プロモーションとして、東京など首都圏に滞在している外国人旅行者に対し、開幕後の実際の会場写真や映像を活用しながらOTAなどで集中的に訴求し、当日・翌日の来訪につなげることを目指す。

 ブランディング施策としては、「花と港」を合言葉に、公式マスコットキャラクター「トゥンクトゥンク」と連携したフラワーバッグを制作。来場者が花を手に取りフラワーバッグで横浜の街を歩く情景そのものが、横浜のブランド価値向上に自然につながる設計だ。

 横浜駅・桜木町駅に加え、移動式観光案内所を人が集まる場所へ機動的に展開。ウェブサイト「Expo日経」で市内各地のイベント情報を英語ページを含め集約・発信する。地域事業者と連携したフラワークルーズやフラワーエアキャビンなどの体験型コンテンツも造成し、開催後も継続するコンテンツとして育てる方針だ。


河東氏

タイ観光庁が示す「5つのビジョン」と140周年の取り組み

 藤村氏はタイ国政府観光庁(TAT)の体制と観光戦略を紹介した。

 TATは観光スポーツ省の下に置かれ、全世界からタイへの誘致を担うマーケティング機関だ。本部はバンコクにあり、日本を含む海外オフィスも展開している。

 藤村氏が紹介した観光マーケティングの5つのビジョンは以下の通りだ。

  • バリュー・オーバー・ボリューム(量より質のプレミアムなブランディング)
  • 体験価値の提供(訪問者に有意義な旅を届ける素材の整備)
  • 地方分散(77都県をAmazingThailand365日として発信)
  • ソフトパワー(食・ファッション・ライフスタイルなどタイらしさのクリエイティブエコノミー化)
  • サステナビリティ

 今年のテーマは「Healing is the new luxury」。ウェルネスを軸としたブランドメッセージを発信しており、来年度も継続する。

 2027年の日タイ国交正常化140周年を「タイ日観光交流年」と位置づけ、複数のテーマで取り組みを展開する。第1の柱がガストロノミー。タイは「世界の台所」とも呼ばれ、タイ料理だけでなく日本食や中華料理など多様な食文化が集積する。ミシュランレストランからストリートフードまで多層的な食体験を誇る点が強みだ。第2の柱がエデュケーション。若い世代のタイ訪問と、タイの学生との相互交流促進を図る。さらにスポーツ(ゴルフ・サッカー・バレーボールなど)、アート&カルチャー、年間約330イベントに上るフェスティバルを主要テーマとして打ち出す。

 コラートについては、バンコクから車で約2時間の東北部(イサーン地方)の玄関口と紹介した。タイの77都県を北部・中央部・東部・南部・東北部の5地域に分類したうち、農業地帯としての性格を持つ東北部に位置する。近隣にはカオヤイ国立公園(世界遺産)などの自然公園があり、遺跡群、マーケット、地元食文化(ソムタム、ガイヤーン、サイクロークイサーンなど)、ワイナリー、リゾートなど多様な観光資源が揃う。

 アクセスについてはアジアンハイウェイの高速道路整備が進み、バンコクからのアクセスが大幅に改善されている点を強調した。マイス(会議・研修・視察)産業の経済活性化という観点からも、コラートが次回国際園芸博覧会の開催地に選ばれた背景があると説明した。

藤村氏

 

「2027年から2030年へ」 日タイ双方向交流のレガシー

若松氏

 

 3名のパネリストとモデレーターの若松氏が加わったパネルディスカッションでは、グリーンエキスポを契機とした具体的な連携施策と、2029年のタイ・コラート開催に向けたレガシー継承が中心的なテーマとなった。

 若松氏はまず日タイ間の人流データを提示。2025年の1年間でタイから日本への訪問者は123万人、日本からタイへの渡航者は109万人に上り、双方向いずれも100万人を超える基礎値の高い関係にあることを確認した。

 「これだけ高い基礎値を持つ市場で、今回のようなタッチポイントをさらに活用すれば、双方向交流をますます伸ばせる」と若松氏は述べた。

 インバウンドプロモーションの具体策として、多田氏は来月開催予定のタイの旅行フェア(FITF)で横浜市観光協会と共同出展することを明らかにした。「東南アジア、特に花好きな市場としてタイ、シンガポールなどに焦点を絞ってプロモーションしたい」と語った。

 タイの旅行者が花や庭園の鑑賞を旅行目的の上位に置いていることを踏まえ、JNTOのデータでは東南アジア旅行者の42.3%が庭園・花の鑑賞に高い関心を持つことが示されている。グリーンエキスポはこの層にとって横浜を訪れる強力な動機となる。

 河東氏は、グリーンエキスポ開幕直後から会場内の写真・動画をインフルエンサーと連携してリアルタイムで発信する調整を進めていることを明かした。「タイ在住3年の経験から、桜などへの感度の高さはSNS上でも肌で感じていた。開幕直後のビジュアルをタイム市場に対してリアルタイムで届けることが重要だ」と語った。

 アウトバウンドの観点では、多田氏が円安局面における東南アジア旅行の優位性に言及した。「昨今の円安が続く中で欧米旅行は費用が上がる一方、タイなどの東南アジアは比較的手ごろなアウトバウンド先だ。インバウンドで来てもらうだけでなく、日本人もタイのおもてなしを楽しみに行く相互交流が理想的だ」と指摘した。

 ガストロノミー分野での連携については、河東氏がタイの先行事例に学ぶ姿勢を示した。「横浜はガストロノミーを一つの軸に食を盛り上げようとしているが、タイのウェルネスやヘルスツーリズムの先進性、そして世界のレストランランキングであるワールドベストレストラン50にタイが上位で入っていることからも、横浜として勉強すべきことは多い」と述べた。

 コラートでの次回エキスポに向けたレガシーについて、多田氏は目に見えるレガシーと目に見えないレガシーの双方の継承が重要だと整理した。「ドバイ万博、大阪・関西万博と受け継がれてきた施設部材が今回の横浜でも活用されているように、目に見えるレガシーがある。それに加え、人と人のつながりや観光のストーリーという目に見えないレガシーをコラートへとつないでいくことが大切だ」と語った。

 藤村氏は、2027年の横浜エキスポでタイがどのような展示を行うかに注目を促したうえで、「2029年のコラートのエキスポに実際に足を運んでもらい、エキスポ会場と周辺の観光施設をあわせて楽しんでいただくことで、地方創生と観光が相乗効果を生む形を作りたい」と述べた。コラートへの高速道路の整備が進み、アクセスが大幅に改善されている点も改めて強調した。

 マイス分野においても、日タイ間の共通性が確認された。若松氏はJNTOバンコク事務所の知見として、「タイの方の知的好奇心は非常に高く、視察や企業訪問がマイスの訪問地選定の大きなキーになっている」と紹介。日本でのマイス誘致においても、タイ側のガストロノミーやマイスインフラの充実が双方向交流をさらに加速させる可能性があるとの認識で一致した。

 タイ市場における日本の四季の訴求については、藤村氏が「タイの方は雪や北海道への関心がとても高い。花や桜だけでなく、冬の雪も含めて一年を通じて日本を楽しめることをアピールすることが大事だ」と語り、多田氏も「グリーンエキスポは春だけでなく夏・秋の会期もある。さらに神奈川には箱根もある。年間を通じた日本の魅力を発信できる」と応じた。

 ディスカッションの最後に若松氏は全体を総括し、「それぞれ個別に存在していたグリーンエキスポ2027、日タイ国交正常化140周年、横浜のインバウンド戦略、コラートという次なる開催地、タイの観光マーケティング戦略が、ウェルネス、ヘルスツーリズム、ガストロノミー、花、雪といったキーワードで結びつき、ひとつのストーリーになった。このストーリーをレガシーという言葉に置き換え、2027年から2029年、2030年にかけて日タイ双方向の交流をここにいる皆さんと一緒にさらに深めていきたい」と締めくくった。

 シンポジウムでは以下の決定事項・合意事項も確認された。

  • 来月のタイ旅行フェアで横浜市観光協会と2027年国際園芸博覧会協会が共同出展し、横浜の観光プロモーションおよびグリーンエキスポの周知を行う
  • グリーンエキスポ開催期間中、インフルエンサーと連携してリアルタイムでの情報発信を実施する
  • ガストロノミーやウェルネスを共通テーマとして観光マーケティングを強化する
  • グリーンエキスポのレガシーを継承し、将来的な観光交流の基盤とする
  • 両国の観光局および関連団体が継続的に情報共有と連携を行う

 なお、グリーンエキスポ2027の入場チケットはコンビニエンスストアなどで既に販売中。来場日時予約は9月18日より受付開始されている。前売り料金は大人4,900円(当日5,500円)。ツーリズムEXPOジャパン2026の会期中は、東ホール7番にグリーンエキスポのブースが設置された。

【kankokeizai.com 編集長 江口英一】

 
 

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