「外国人技能実習制度」 宿泊業、対象職種化を模索


4団体で推進体制調整

 宿泊業界が外国人材の受け入れ拡大を目指している。宿泊業4団体で構成する「宿泊業外国人労働者雇用促進協議会」は、外国人技能実習制度の活用を検討。最長3年の受け入れが可能な「2号移行対象職種」への宿泊業の追加に向けた取り組みについて、課題の抽出、団体間の合意形成を進めている。一方で政府は、人手不足を背景に外国人材の受け入れに関して制度改正を検討中で、夏にも具体的な方向性を示す。産業界が外国人材に熱い視線を注ぐ中、宿泊業界の対応が注目される。

 4団体が2016年10月に立ち上げた宿泊業外国人労働者雇用促進協議会は、日本ホテル協会、全日本シティホテル連盟、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会、日本旅館協会で構成。各団体がメンバーを出し合い、4月17日の会合までに8回の会合を重ねた。オブザーバーとして観光庁も毎回参加している。

 協議会が、現在議論しているのが技能実習制度。開発途上国などの外国人に「技能実習」の在留資格を認め、日本国内の企業で一定期間働き、技能を習得してもらう国際貢献を目的とした制度。複数年の雇用が可能な職種は、公的な技能評価制度を整備し、2号移行対象職種として国の認定を受ける必要がある。昨年の法改正で運用が厳格化されたが、新設された技能実習3号では、最長5年の実習が可能だ。

 2号移行対象職種は、農業、漁業、建設、食品製造、繊維・衣服、機械・金属などの関係職種を中心に77職種(139作業)。17年12月末の技能実習生は27万4233人で、技能実習2号への移行者数(2年目以上)は8万6583人。技能実習生の国籍別の割合はベトナム45・1%、中国28・3%、フィリピン10・1%、インドネシア8・0%、タイ3・1%など。

 協議会のメンバー、日本旅館協会労務委員会委員長の山口敦史氏は「宿泊業の外国人就労で現在活用されている在留資格『技能・人文知識・国際業務』は、外国語を用いたフロント業務や通訳、翻訳など業務内容が限られてしまう。技能実習ならば、現場の実務に即した受け入れができる。ただ、制度の活用には業界内の合意形成が必要。4団体が足並みをそろえ、業界を挙げて推進できるようにしたい」と話す。

 2号移行対象職種に認めてもらうには、受け入れ態勢を準備する必要があり、まずは業界内の合意を形成し、技能実習生に対する評価試験の運営を担う試験実施機関を業界団体、またはその関係団体の中から決め、試験案などを作成しなければならない。協議会では、これら要件への対応を検討するとともに、2号移行対象職種への認定申請に向け、4団体の役割分担など合意形成の最終調整を進めている。

 国の政策において観光施策の重要度が増す中、政府側も、宿泊業界の外国人材への取り組みに関心を寄せている。協議会にオブザーバーとして参加する観光庁観光産業課の田村寿浩観光人材政策室参事官は「受け入れ態勢づくりが急務との認識は4団体に共有されつつあると思う。観光庁としては、2号移行対象職種になっている国土交通省所管の各産業の情報などを活用し、関係省庁とも連携を取って宿泊業界の取り組みに前向きに協力していく」と話す。

 協議会は、外国人材に関する政府の制度改正の動きに注目している。2月20日の経済財政諮問会議では外国人労働力がテーマに。安倍晋三首相は「移民政策をとる考えはない」と強調した上で、深刻な人手不足への対応として、生産性向上などの推進とともに、「専門的、技術的な外国人受け入れの制度の在り方について早急に検討を進める必要がある」と述べ、関係省庁に具体的な制度改正の方向性を夏までに示すよう指示した。

 首相の指示を受け、内閣官房、法務省を中心に関係省庁で構成する「専門的・技術的分野における外国人材の受入れに関するタスクフォース」が設置され、議論が進められている。タスクフォース幹事会の構成員には、観光庁の田村参事官が選ばれ、宿泊業界の動向なども報告している。

 制度改正の内容は明らかではないが、4月中旬には複数の報道機関が、技能実習を終えた外国人がさらに最長5年間就労できる新たな在留資格を政府が来年4月にも創設するとの内容を報じた。外国人材をめぐっては、人手不足などを背景に本格的な活用への期待が高まっており、宿泊業界としても対応をせまられている。

 
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