
高付加価値化、DXが鍵
政府の2023年版「観光白書」は、旅行需要の回復が進む中、観光産業では、生産性の低さや人手不足といったコロナ以前からの課題が顕在化しており、「稼ぐ力」の強化が不可欠になっていると報告した。宿泊施設の改修などを支援している観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業などの施策、デジタルツールを活用する観光DXの推進などで収益力を高め、就業者の報酬への分配を増やし、企業の再投資にもつなげていく重要性を指摘した。
白書は、国の統計などを基に観光産業の課題を説明。22年の宿泊業の年間賃金総支給額は346万円で、全産業平均の497万円を大幅に下回る。宿泊業は、コロナ前から離職率が全産業平均に比べて高い上、宿泊需要が改善する中、人手不足はコロナ以前の深刻な水準に戻っている。
日本の観光の「稼ぐ力」を分析するため、国内で生産した観光サービスの付加価値額「観光GDP」を欧米諸国と比較。コロナ前の19年における日本の観光GDPは11.2兆円に上るが、経済全体(GDP)に占める観光GDP比率は2.0%にとどまり、スペインの7.3%、イタリア6.2%、フランス5.3%などを大幅に下回る。
また、19年の宿泊業就業者1人当たりの付加価値額は、米国976万円、スペイン709万円、イタリア690万円などに対して、日本は534万円と相対的に低い。宿泊業就業者1人当たりの雇用者報酬も、日本は米国やスペインより低い水準となっている。
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