観光の信頼を取り戻す 沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)会長 下地芳郎氏に聞く


沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)会長 下地芳郎氏

物産、農林、芸能、工芸など連携 観光人材育成センター強化

 ――コロナ前、コロナ以降の沖縄県の観光の状況は。

 「数字から申し上げると、国内の入域観光客数は2018年度約700万人、19年度約698万人、20年度258万人、21年度約327万人、22年度約657万人だった」

 「コロナ前は国内に約6割存在する『沖縄未経験者層』を対象に販促活動を展開。コロナ中は、沖縄県のリーディング産業である観光産業が大きな影響を受け、県経済への影響が広がっている中、全国からの渡航自粛解除後に迅速かつ即効性の高い官民一体となったプロモーション活動を実施するため、『憩(いこ)うよ、沖縄。』プロジェクトロゴ・キャッチコピー制作等を行った。また、新型コロナの影響による車両不足、人手不足により、レンタカーの供給がひっ迫していたことによるレンタカー不足が課題となっていたことから、21年10月から公開しているウェブページ『レンタカーだけじゃない沖縄旅』を刷新し、『レンタカーを使用しなくても楽しめる沖縄旅行』のモデルコースや宿泊プラン等の紹介ページを充実させた。23年度は、コロナからの本格的な復活を目指し、選ばれる観光地として沖縄が持つ独自の自然や文化、伝統などのソフトパワーを生かした付加価値の高いコンテンツを訴求するとともに、環境や地域に配慮した旅や公共交通を活用した旅など新たな魅力の発信を強化する。観光業界だけでなく、物産、農林、芸能、工芸などの各分野との横断的な連携も推進していく。21年度から実施している『エシカルトラベル』のプロモーションにも注力する」

 ――インバウンドは。

 「インバウンドについては18年度約300万人、19年度約249万人、20年度ゼロ、21年度ゼロ、22年度約20万人だった」

 「コロナの影響で20年3月24日に国際線が全便運休となったが、それ以前には19の航空会社が東アジア・東南アジアの7カ国・14空港と沖縄を結んでいた。台湾、中国、韓国、香港を中心に多くの観光客が来沖していたが、那覇空港の滑走路が1本だったこともあり、自衛隊機や貨物機などを合わせた発着回数はピークを超えていた。那覇空港の駐車場も慢性的に不足していたことから、周辺の交通渋滞を引き起こしていた。過度な観光客の受け入れによる環境への影響を懸念した『オーバーツーリズム』『観光公害』という言葉が聞かれるようになった。またクルーズについても、県内各地で港湾整備が進められ大型クルーズ客船の受け入れが可能になると、寄港時にオプショナルツアーに参加するツアーバスでさらなる交通渋滞を引き起こした。秋口には修学旅行やMICEと重なり、バス不足も問題となった。観光客は増え続け、県民の生活に少なからず影響を与えていたにもかかわらず、沖縄に落ちる観光収入は限定的で県内に進出している多くの県外、海外資本の企業に吸い上げられる『ザル経済』と揶揄(やゆ)されたりもした。そのような中、コロナの影響で20年3月に国際線が全便運休。航空機の離発着渋滞緩和を期待され、時を同じくして運用開始された那覇空港第2滑走路も活用の制限を余儀なくされる事態となった」

 「コロナ中は、海外現地でのリアルプロモーションができない中、沖縄の自然文化などの情報発信をSNS等で続けた。22年8月に韓国線が再開されるまで外国人観光客はゼロだった。その後、台湾線、香港線も再開。23年1月に上海線も再開した。今後も既存路線の増便や新規就航の要望はあるものの、那覇空港のグランドハンドリングやカウンター業務などの人員不足が足かせとなっている」

 ――レンタカー不足、バス・バスガイド不足、人手不足の現状は。

 「コロナ禍による観光客激減によりレンタカー各社は保有台数を減らしていたが、現在は回復した。22年度のレンタカー車両台数は前年比33.9%増の4万2718台で事業者数は1274社。過去最高だった18年度の4万1249台・812事業者を上回った」

 「コロナ禍で廃業や減車したバス事業者も多い。約3年間で200台以上減少した。10、11月に修学旅行などの団体旅行客が戻ってきても台数の確保ができない可能性がある。ガイド、ドライバーの人材不足も課題となっている」

 「コロナ禍の影響で多くの観光人材が流失したことによる人手不足が直近の課題となっている。コロナが長期化することで、観光という産業が不安定な職業だと位置づけられてしまった。観光は沖縄にとって今後も非常に重要な産業だ。観光の信頼を取り戻す必要がある。OCVBとしても『観光人材育成センター』を強化し、観光人材の育成と確保に力を入れていく。コロナを機に、日本の観光地は『持続可能性』を重視した方針にかじを切っている。キーワードは『量から質へ』『高付加価値化』だ。質を高めて、それに応じた量を増やすことが重要だ」

【聞き手・kankokeizai.com編集長 江口英一】

沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)会長 下地芳郎氏

 
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