
日本旅館協会関西支部連合会(岡本厚会長)は1日、大阪観光大学(大阪府熊取町、山本健慈理事長)で、旅館業セミナーと個別就職マッチング会を開催した。同大の3、4年生約70人が旅館の女将から旅館での働き方や働く魅力などについての講演を聞いたのち、約2時間にわたり近畿の著名旅館13社との個別就職相談を行った。
観光需要の回復に伴う人材不足の解消などを目的に、近畿運輸局の協力を受けて実現した。大阪観光大学は学生の6~7割がアジアを中心とした国からの留学生が占めており、留学生の就職活動が卒業後から本格化することなどから、「ほぼ全員が観光業界を志望しており日本語も日本語能力試験のN2レベルであるものの、4年生のうち約100人の就職が未決のまま」(五嶋俊彦・同大准教授、キャリアセンター長)。インバウンド客の増加で、旅館業界では日本語能力の高い外国人人材の確保なども求められていることも企画を後押しした。
第1部の旅館の魅力を発信するセミナーでは、綿善旅館(京都市)の女将、小野雅世氏が旅館とホテルの違いや自館のコンセプト、スタッフの働き方などについて講演。長期休暇や育休の確保など、「従業員が幸せだからこそお客さまを幸せにできる」との考えのもと行っているワークライフバランスを重視した取り組みや、国籍に関係なく旅館でキャリアアップしていける仕組みなどを紹介。「旅館の雰囲気や社内の取り組みはそれぞれ違うので、気になったらまず足を運んでみてほしい。社会人になれば自分の人生は自分の責任。妥協せず冷静に、じっくり考えて就職先を選んで」とアドバイスした。
第2部の就職マッチング会では関西地区の旅館13社がブースを開設。第1部の旅館セミナーに参加した学生らが約2時間にわたり、各旅館の担当者から宿の立地や特徴、働き方について説明を受けた。このうちネパール出身の4年生は「旅行会社志望で旅館への就職は考えていなかったが、旅行に携われるのは旅館も同じ。就職先として考えてみたい」と話した。
同企画を主導した今津一也・同連合会総務企画委員長(ホテル金波楼社長)は、個別マッチングの時間の不足などの課題もあったものの、多くのの学生が参加して、旅館への理解や関心を深めたことやインターンシップなどへのきっかけづくりができたことを成果として挙げたほか、「『この職業に就きたい』と決めている学生が少ない現状を知れたのは良かった。人生の中でキャリアをどう組み立てていくか模索している若者に明確なキャリアを示すことなどで選ばれる業界にしていかなければならない」と話した。
同連合会では旅館の魅力や働き方の実際を発信しながら、学生と旅館をマッチングするような取り組みを今後も続けていく考えだ。
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