
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)が主催、厚生労働省が後援し、観光経済新聞社などが協賛する「人に優しい地域の宿づくり賞」が今年で25回の節目を迎えた。高齢者をはじめ、全ての人に優しい取り組みを行う宿や団体を表彰する制度。少子高齢化や、さまざまなバックグラウンドを持つ人々の社会進出が進展する中、同賞の存在価値はますます高まっている。
賞は「地域の旅館ホテルや旅館ホテル組合が参加または主催する活動で、高齢者等をはじめ、全ての人々に優しい配慮がなされており、地元の団体やボランティアグループ等が協力して行う下記(後述)のジャンルを対象とする」もの。応募の中から選考委員会が審査し、「厚生労働大臣賞」「全旅連会長賞」をはじめ、さまざまな名誉ある賞を贈っている。
対象ジャンルは(1)特性を生かした活動(温泉、料理、まちづくり、滞在型等)(2)経済の活性化(情報技術〈IT〉、施設、地域貢献等)(3)歴史・文化の振興(イベント・祭り、趣味等)(4)環境づくりの推進(緑化、清掃、リサイクル、環境保全等)(5)スポーツの振興(体操、ゲートボール、健康増進等)(6)福祉の充実(健康、設備、サービス・接遇、ボランティア等)(7)国際化の推進(インバウンド、インフラ整備等)(8)省エネ・節電の取り組み(冷・暖房の対策、蛍光灯やLED照明への交換等)(9)労働生産性の向上(従業員のやりがい向上、業界・地域への影響度等)(10)その他、人に優しい地域の宿づくり活動と認められるもの―。
全旅連の1997年通常総会で同賞の創設を承認。厚生省(当時)の認可を経て創設が正式決定した。
同年の全旅連通常総会で大木正治・シルバースター推進委員長(当時)は、「シルバースター登録制度の社会的な啓蒙活動の一環」と、賞創設の理由を説明。また1998年に行った本紙掲載の鼎談では、「観光地を含めた日本が、高齢者や障害者など人に優しかったかというと、決してそうとは言えないと思う」と、当時の人に優しい地域の宿づくり賞選考委員長で立教大学観光学部長・教授の岡本伸之氏の発言に対し、「観光業界に対して高齢者を大事にする必要性を説くための意識改革も目的にある」と述べている。
このシルバースター登録制度は、高齢者の受け入れについて、ハード、ソフトともに一定の基準を満たした宿泊施設を登録する制度だ。人に優しい地域の宿づくり賞創設当時のシルバースター登録施設数は約400軒。賞の創設を決めた1997年の全旅連総会を取材した本紙は「同表彰制度創設が実現すれば、(シルバースター登録推進へ)大きな推進力となる」と評しており、その通り、同賞の第1回開催後から登録施設数が急速に拡大。2006年に登録施設数は部会の悲願だった大台の1千軒に到達した。