【VOICE】旅行会社の存在意義 日本旅行 取締役兼執行役員 吉田圭吾氏


吉田取締役

時代に合わせた転換を

 2020年から続く新型コロナウイルスの影響によって観光産業はどん底に突き落とされました。最初の緊急事態宣言が発出された昨年4~6月の収入は「減少」ではなく「0(ゼロ)」となり、感染が低位にある現在も平時の半分以下のレベルでしか戻っていない状態です。それゆえ当社を含む販売規模の大きな旅行会社は経営上大きな苦境に立たされ、人員削減や増資・減資という措置を余儀なくされたことは周知のことであります。

 当時、私は東北6県を管轄する立場にあり、震災後10年となる東北に貢献するべく取り組んでいましたが、コロナの影響を直接受けて収入はほぼなくなりました。そもそも旅行事業というものは、修学旅行や慰安旅行に代表されるように大半が「発地事業」であり、地元への経済効果という面では貢献度が薄く捉えられがちです。特に今回のような非常時においては、支援対象の事業としては優先度が低く置かれていると感じました。“旅は人の心を豊かにする”という意識でわれわれはこれまで旅行事業に取り組んできましたが、“旅だけでは世間に貢献できない”ということもその時悟ったのです。

 現在の日本旅行は「顧客と地域のソリューション企業グループ」へと生まれ変わろうとしています。旅行だけでなく地域が経済的に元気になるためのあらゆるソリューションを提案しています。防衛省様はじめ全国200を超える自治体でのワクチン接種事業をコーディネートさせていただき各地での消費喚起事業や誘客事業にも多く携わることができました。これらは当社の大きな事業に成長しています。

 ご存じの通り旅行業は販売に比して利益の低い産業です。それゆえ平均して低報酬かつ労働付加の多い業界でありながら、“夢を売る仕事”という誇りで進んできたのがわれわれ旅行会社の実態です。実は、過去においても旅行業以外の事業に進出しようとしましたが、うまくいきませんでした。それが、今回のコロナ影響により旅行需要がすべてなくなったが故に、奇しくも事業変革が一気に進むこととなったのです。

 コロナウイルスへの対応については、昨年度の発生当初から、水際対策や医療政策、人流抑制に代表される社会政策に対してさまざまな賛否の意見があります。しかしながら、恐竜絶滅の契機ではないですが、コロナウイルスのまん延は“隕石(いんせき)”が落ちてきたものと捉えて生き残りを模索していくしかなく、これまで変革が遅れているとされてきた旅行会社は、時代に合わせてビジネスモデルを柔軟に転換していくことが重要であると強く感じたところであります。

吉田取締役

 
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