
群馬県地域創生部 文化振興課 歴史文化遺産室 室長 井上昌美氏
わくわく、ドキドキ、感動する歴史博物館
皆さんは群馬県と聞いてまず何を思い浮かべるだろうか。多くの方は温泉や自然豊かな山河だと思う。また世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」もある。それらに加え、実は群馬が世界に誇れるものとして「古墳」や「埴輪(はにわ)」があるのだ。
今からおよそ1700~1300年前ごろ、地域を治めた有力者の墓として「古墳」が造られ、「古墳」には「埴輪」が飾られた。群馬県内には1万3千基を超える古墳が造られ、現在でも約2千基が残っている。群馬県内のコンビニの数が920店舗(2022年3月現在)であることからも、その数の多さが分かるだろう。また、国宝に指定されている「埴輪」は群馬県出土のものであり、重要文化財の「埴輪」の実に約4割が県内出土である。さらに、この時代には榛名山が2度噴火しており、火砕流や軽石の下には当時の集落や田畑が遺跡として残っているのである。これらのことは研究者以外にはあまり知られていない。
2020年5月に文化観光推進法が施行され、文化庁は「博物館等の文化拠点としての機能強化や、地域における文化観光の総合的かつ一体的な推進を通じて『文化振興・観光振興・地域活性化』の好循環を創出」するとし、モデルとなる拠点計画・地域計画の認定および事業支援が始まった。群馬県はすぐに拠点計画に名乗りを上げ、「群馬県立歴史博物館イノベーション文化観光拠点計画」が、初回大臣認定10件のうちの一つとして認定された。事業計画期間は2020~2024年の5カ年計画である。
この拠点計画でわれわれが目指したのは、歴史博物館を「古墳」「埴輪」や「榛名山噴火関連遺跡」の国内外への情報発信拠点として、「わくわく、ドキドキ、感動する歴史博物館」にすることである。遺跡や文化財というと、どこか難しく専門的な知識がないと分からないイメージがあるが、国宝埴輪の実物展示に加え、ストーリー性のある展示構成やデジタル技術を用いて通常ではできない体験を提供していきたい。そして歴史文化に興味を持ってもらうことで、博物館を起点に実際に古墳や遺跡を訪れ、さらには火山の恩恵を受けた温泉や食などを結びつけた周遊観光につなげていきたい。
すでに整備が完了したデジタル埴輪展示室では、デジタル技術で埴輪を触り自由に動かす疑似体験ができる「埴輪スコープ」や、画面上で発掘体験を楽しめる「はにわ研究所」などがあり、来館者から好評を得ている。2024年度まで随時展示内容を更新していく予定であり、次の旅行先を検討している皆さまには、ぜひ群馬県立歴史博物館を訪ねてもらいたい。