「エンゲージメントを強化」——アコー・プラスCEO エミリー・クートン氏に聞く、日本市場本格展開の狙いと「ALL Accor+ Explorer」の全貌


アコー・プラスCEO エミリー・クートン氏

 フランスに本社を置くグローバルホテルグループであるアコーの子会社、アコー・プラスは2026年6月30日、プレミアム有料会員プログラム「ALL Accor+ Explorer(オール アコー・プラス エクスプローラー)」の日本国内でのサービス提供を本格的に開始した。年会費39,800円(税込)で「ALL Accor」のゴールドステータスが即時付与され、アジア太平洋地域を含む1,400以上のホテルで年間2泊分の無料宿泊特典が利用できる。1994年にオーストラリアで誕生し、30年以上の歴史を持つこのプログラムが、なぜ今、日本で本格展開を迎えたのか。アコー・プラスの最高経営責任者(CEO)エミリー・クートン氏に話を聞いた。【kankokeizai.com 編集長 江口英一】

 

アコー・プラスとは何か

 ――アコー・プラスについて教えてください。

 まず、組織の構成からご説明します。アコーという親会社があり、その下にオールアコー(ALL Accor)という無料のロイヤリティプログラムがあります。アコー・プラスはアコーの子会社で、有料のサブスクリプション型プログラムを展開しています。そのプログラムが「ALL Accor+」であり、その最上位プランが「ALL Accor+ Explorer」です。

 このプログラムは、新しい商品ではありません。1994年にオーストラリアで誕生し、アジア太平洋地域を中心に30年以上にわたって展開されてきました。日本でも20年前から展開されていましたが、このたび18ヶ月間のリサーチを経て、日本の旅行者向けに本格的なサービス提供を開始することになりました。

 ――なぜ今、日本での本格展開なのですか。

 2025年の第1四半期から2026年の第1四半期にかけて、アコーホテルに滞在する旅行者数が前年比27%増加しています。日本は非常に注目度の高い市場です。日本にいる旅行者に向けて、アコーが日本で成長させているネットワークを最大限に活用してもらいたいと考えています。

 また、オーストラリアやシンガポールなど、日本国外の「ALL Accor+ Explorer」会員は、6月30日以前から日本でもベネフィットを体験することができていました。今回は、日本在住の旅行者向けに本格的に展開していくという段階に入ります。

 

年会費39,800円で得られる特典の全容

 ――プログラムの内容を具体的に教えてください。

 年会費は39,800円(税込)です。日本の会員向けに用意している主な特典は次の通りです。

 まず、「Stay Plus」として、日本、アジア太平洋地域、UAEの1,400以上のホテルで、年間2泊分の無料宿泊特典を提供します。2連泊以上の滞在予約時に利用できます。

 次に、「Red Hot Rooms」として、対象ホテルで期間限定、最大50%オフの会員向けプランを用意しています。

 ダイニング優待として、日本、アジア太平洋地域、UAEの1,750以上のレストランと1,250以上のバーで、食事30%オフ、ドリンク15%オフの優待が受けられます。

 さらに、世界110か国以上、30以上のホテルブランド、5,000軒以上のホテルで通常料金から15%オフで宿泊できます。

 そして入会と同時に、「ALL Accor」のゴールドステータスが即時付与されます。年間30泊分のステータスナイトが付与されるため、客室アップグレード、アーリーチェックイン、レイトチェックアウト(空室状況による)といった特典を世界のアコーホテルで享受できます。

 日本国内では現在、46のホテル・リゾートに展開する88のレストラン・バーが対象施設として参画しています。会員はこれらのダイニング・宿泊優待を活用することで、年間平均約100,000円相当の特典・優待を受けられるとしています。

 ――ベネフィットの使い方を具体的に教えてもらえますか。

 例えば、2週間の休暇で東京、大阪、京都を旅行するケースで説明します。まず東京で1泊を無料宿泊特典として使い、もう1泊は通常料金から15%割引で滞在します。大阪ではRed Hot Roomsの対象ホテルがあれば、最大50%割引で宿泊できます。京都では残りの1泊分の無料宿泊特典を使ってもよいですし、次のオーストラリアでの旅行に温存して、代わりに15%割引で滞在するという選択もできます。さらに、旅行中のダイニングでは30%割引が適用される。このように、一つの旅でも多くのベネフィットを重ねて活用できる仕組みです。

 近所のホテルのダイニングで使ってもいいですし、ステーケーション(自宅近くでの滞在)でも、郊外での休暇でも使えます。日常の様々なシーンでアコーを選んでいただく動機になると考えています。

 

アジア太平洋限定のプログラム——欧米展開がない理由

 ――このプログラムはヨーロッパやアメリカでは展開していないのですか。

 はい、このプログラムはアジア太平洋地域を対象としたものです。1994年にオーストラリアで誕生し、オーストラリアから展開を始めたという経緯があります。ネットワークやシステムの面で、まずアジア太平洋地域内に集中してきました。

 成功の鍵は一貫性です。ホテルとレストランに対して、ベネフィットを確実に、継続的に、一貫した形で提供すること——これが最も重要です。新たな国に展開する前に、このベネフィットの一貫性を確保することが大前提になります。

 現在は中東にも進出しており、UAEへは2026年5月以降に拡大しました。今後数ヶ月でさらに中東エリアでの展開を広げていく予定です。

 ――プログラムのサービス内容や年会費は、展開している国で統一されているのですか。

 はい、基本的には統一されています。アジア太平洋で展開している内容も金額も一律です。ただし、通貨の変動による影響はあります。

 ホテルの料金自体が高くなっている現状を踏まえると、割引や無料宿泊の特典を活用することで節約できるという意味で、十分な価値があると考えています。また、日本の旅行者が海外に出かける際にも、30%のダイニング割引や最大50%の宿泊割引を大いに活用できます。

 

グローバル48万5,000人、日本は1,100人——会員拡大の戦略

 ――会員数を教えてください。

 グローバルでは現在、約48万5,000人の会員がいます。日本では約1,100人です。日本では広告を一切出さずに、1,100人の会員が集まっています。この1,100人は、プロアクティブにプログラムを購入した方々で、ホテルで購入した方もいれば、日本国外での滞在経験がある日本人が購入した方もいます。

 今回の本格展開における主な目標は、日本国内の会員を増やすことです。

 ――いつまでに何人という数値目標はあるのですか。

 具体的な数字というよりも、エンゲージメントの強化が目標です。日本国内のホテルとレストランに対して、収益を生むエンゲージメントを実現することを目指しています。

 現在、パートナーシップの構築に積極的に取り組んでいます。金融サービス企業との連携も視野に入れており、日本国内に1社か2社のキーパートナーを獲得できればと考えています。オーストラリア、インド、シンガポールでは、アメリカン・エキスプレス、マスターカード、ビザといった金融機関とすでに展開しており、クレジットカードへの内蔵やコブランドカードの形で会員を拡大しています。

 ――航空会社とのマイル提携はありますか。

 航空会社とのパートナーシップという観点では、カンタス、エールフランス、カタール航空などとの提携は「オールアコー(ALL Accor)」として展開しています。「ALL Accor+ Explorer」はそのオールアコーのプレミアム商品であり、ベネフィットの提供が中心となります。

 

「道後温泉が大好きです」——CEOが語る日本の温泉体験

 ――クートンCEOは日本の温泉や旅館に行かれたことはありますか。

 はい、何度も訪れています。去年の5月には、しまなみ海道を自転車で走り、今治を経由して松山に泊まりました。道後温泉がとても好きです。素晴らしかった。その後、直島・豊島を経由して宇野に滞在しました。大きな施設という感じではありませんでしたが、宇野という場所がとても気に入りました。

 もう一つ印象深いのは、長野の上高地エリアです。小さな温泉地に滞在しました。日中はハイキングをして、その後に温泉に入って瞑想する——そういう過ごし方がとても気に入っています。

 そして一番好きなのは北海道です。外に雪が降っているなかで温泉に入るあの体験は、とても素晴らしいものでした。

 ――お好きな日本料理は何ですか。

 新鮮な魚が大好きです。鮭も好きですし、牛肉も好きです。懐石料理も大好きで、さまざまな小鉢が並んでいて、それを選びながら食べるのが楽しい。

 私はフランス人なので、懐石料理とフランスのフルコース料理の共通点についても話していたんですが、懐石料理はアートのように味も盛り付けも楽しめる料理だと思います。フランス料理は前菜、メイン、デザートという順番がありますが、懐石料理はパレットが用意されていて、それ全体を一つの大きな作品として見ているような感じがする——そういう違いもありますね。

 それから、20年前に初めて日本に来たとき、メニューを渡されても日本語が読めなかったので、目をつぶって指でランダムに選んでいました。それでも絶対に間違わない。日本料理はどれを選んでも必ず美味しい、ということは当時から分かっていました。

エミリー・クートン(Emilie Couton)氏

アコー・プラス 最高経営責任者(CEO)。フランス出身。ホスピタリティ業界で20年以上の実績を持つ。約20年前よりアジアを拠点とし、アジア太平洋地域を中心に、デジタルマーケティング、ロイヤリティプログラム、ゲストエクスペリエンス、法人営業など幅広い分野で事業成長を牽引。約25年にわたりアコーグループの要職を歴任し、アコーのコアビジネスの主軸としてソリューションを提供する「D-EDGE」での経験も持つ。2025年、アコーのプレミアム・ライフスタイル・サブスクリプションプログラム「Accor Plus」のCEOに就任。現在はシンガポール在住。テクノロジーを活用した顧客体験の向上とロイヤルティ強化を専門領域とし、顧客との長期的な関係構築を通じた持続的な事業成長に取り組んでいる。

 

 
 

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