【DMOの今とこれから 5】変わる長崎市の中で、ダイナミックに動く 長崎観光コンベンション協会


 9月23日に西九州新幹線が開業し、さらなる来客が期待される長崎市。そんな状況下にあり、同市に拠点を構える長崎国際観光コンベンション協会に話を聞くと、「当協会としては現在、ダイナミックな動きを展開しており、新幹線開業はその中の一部という位置付け。正直なところ新幹線開業を余裕を持って見ていられない(笑い)」との回答が。現在と今後の取り組みなどについて、DMO推進本部長・豊饒英之(ぶにゅうひでゆき)氏を中心に同協会に尋ねた。

 豊饒氏の「DMOの要素の一つに、マーケティングが挙げられる」との言葉通り、同協会は市民や事業者、来訪者の満足度の向上、消費の拡大などを目指し、マーケティング分析をもとに取り組みを可視化し、発信することで、旧来的な観光協会のビジネスモデルを刷新しようとしている。

 「グラバー園やカステラ、出島など象徴的なものは多数あるが、それら以外のまだまだ伝わり切れていない長崎の魅力がたくさんある」と豊饒氏。同市が観光資源や素材、観光分野の有力なプレーヤーを多数有している現状を整理し、「さらに高みを目指すための取り組みを民間事業者といかに行えるか」に注力している。中島川シーカヤックなど、朝の過ごし方を提案する「朝たび長崎」事業もその一環だ。これらは地域の事業者による連携で形成、実践されている。

 朝たび長崎は「朝遊んでもらえるなら、前夜に宿泊してもらえるはず」との狙いで出された意見から始まった。さまざまな取り組みは、観光関連以外の業種出身者で構成される同協会内の闊達(かったつ)な議論から生まれ、実践されている。各自が出した意見をマーケティングに取り込み、すぐにできること、今後着手していくことなどに分類していくプロセスを取り入れている。

 同協会はさらに長崎市の強みとして「観光行政のレベルの高さ」を挙げ、「過去の経験を生かしながら地域課題などを市と連携し、解決に向け行動できている」と述べた。 

 これらの動きをより強力に推進すべくブランディング戦略にも取り掛かり、同市のメインコンセプト「『近さ』(多様性の包み込み)」をスローガン「暮らしのそばに、ほら世界。」に落とし込み、発信している。「今日、観光や旅行の目的は多種多岐にわたる。長崎市は各年代、性別のニーズに応じ得るさまざまな滞在を提案できるし、それを『見える化』して正しくお客さまに伝える。これらを実現するための仕掛けづくりに注力している」と豊饒氏は話す。ブランディング戦略を基点に訪問客目線を念頭に置いた長崎市公式観光サイトを大きく刷新するとともに、食・体験・まちあるきをそれぞれ体系的に編集したサイトを新設。同市の満足度向上につながるよう地域コンテンツの受け入れ強化、磨き上げも進める。今後は個人に加え、MICEや教育旅行など法人に対する訴求、域内事業者向けの地域マネージメントもさらに強化する方針を示している。

 観光関連のハード、ソフト整備も大きく進展している。昨年11月1日にはコンベンションホール「出島メッセ長崎」が開業し、MICEの受け入れ体制が整った。その3日前の10月29日には同市野母崎地区に「長崎市恐竜博物館」が開業した。新幹線開業に伴い長崎駅周辺の利便性は大きく向上し、サッカースタジアムを中心にアリーナやオフィス、商業施設やホテルなどを開発する「長崎スタジアムシティプロジェクト」が進行するなど、長崎駅を取り囲む景観は大きく変貌しようとしている。同協会いわく「挑戦的な取り組み」が、長崎市の変革をさらに加速させようとしている。

 
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