近年、観光業界において「バリアフリーツアー」「ユニバーサルツーリズム」「アクセシブルツーリズム」といった言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。観光庁の予算配分の推移などを見ても、全ての人が気兼ねなく旅行を楽しめる環境づくりへの注目度は年々高まっているように感じる。
その背景にあるのが、わが国が直面している「超高齢社会」である。現在、日本の65歳以上の高齢者人口は約3600万人を超え、総人口に占める割合(高齢化率)は約30%に迫る。すでに国民の3人に1人が高齢者という世界最高水準の高齢化社会だ。さらに視野を広げれば、国連の推計によると世界の高齢者人口は現在の約7億人から、2050年には約16億人へと倍増する。特に東アジアの波はすさまじく、2050年には韓国が約39%で世界トップとなり、香港や台湾、中国なども日本に肉薄すると予測されている。東アジアだけでも数億人規模の高齢者層が誕生することになる。
これを観光マーケットの視点から捉え直してみたい。もしこのまま、加齢や身体機能の低下を理由に高齢者が外出を控えるようになれば、国内の観光マーケットは確実に縮小していく。しかし見方を変えれば、高齢者が安心して旅行できる環境を整備し、その外出意欲を喚起できれば、国内の3600万人、そして世界に広がる16億人という極めて魅力的な巨大市場にアクセスできるということだ。日本が「課題先進国」として国内の課題を解決し、先進的なビジネスモデルを構築できれば、それはやがて世界中から訪れる高齢のインバウンド客を受け入れる強力な武器になる。
今、われわれに求められているのは、超高齢化を単なる課題やリスクと捉えるのではなく、次世代の観光を切り開く絶好のチャンスとして捉え直す視点である。
次回は、介護施設向け旅行サービスや、万博の会場内でのサポートサービスを通じて得られた知見を話していきたい。
(東京トラベルパートナーズ株式会社代表取締役、LET(47)S EXPOプロデューサー・栗原茂行)




