【道標 経営のヒント 289】ワクチンの職域接種は、合意形成が鍵 福島規子

  • 2021年7月7日

 東京オリンピック開幕まで1カ月を切った。

 新型コロナのワクチン接種も職域接種が始まり予断は許されないものの感染状況は徐々に落ち着いてくるだろう。顧客との接触回数が多く、接客時間も長い旅館の接客係にとっては、ワクチン接種済みの顧客が増えれば、たとえ自身が未接種であっても、ひとまず安心である。

 ところで、職域接種で懸念されるのが、「ワクチンハラスメント」である。問題は所属長や上司から、「ワクチン接種をしないなら、出勤日数を調整させてもらうね」、あるいは「ワクチン接種をしないとクビ」といったパワハラだけではない。同僚らとの何気ない会話に潜む同調圧力も見逃せない。

 「うちの旅館のお客さまは高齢者が多いんだから、従業員がワクチンを打つのは当たり前よね」

 「みんなが、早く打てば安心できるのに」

 「会社が希望日を調整してくれるって。あなた、いつ行くの」

 ワクチン接種を受けることを前提とした会話では、「受けない」という意思表示をすることは難しい。

 同調圧力とは周囲が設定する基準ないし期待に沿って行動するよう仕向ける圧力のことである。

 同調圧力には2種類あり、多数派の意見に本心から賛同する「私的同調」と、本心とは異なるが表面上多数派に従う「公的同調」がある。

 心理学の行動実験によると公的同調が生ずるのは、1条件当たり15名程度が最低条件とされており、これを大きく下回らない限り、それに起因した深刻なコンフリクトは生じないことが明らかになっている。ただ、社会全体としてワクチン接種容認が多数派であることを考えると、接種を拒否した場合の葛藤が精神的苦痛につながる可能性は高い。

 一方、公正研究の分野では、課題の解決策に対する公正さの評価(提案内容の公正さ)と手続き的公正(決定プロセスの公正さ)に基づいて個人の態度が形成されることが明らかになっている。

 公正の絆仮説といわれるこの説では、「組織や集団による決定が公正になされたと知覚することが、人々の組織や集団に対する肯定的態度(集団コミットメント)を強める」と主張する。

 つまり、ワクチン接種に懐疑的な従業員がいたとしても、経営者がワクチンの効果や社会的意義などを丁寧かつ公平に説明することで、従業員のワクチン接種に対する態度が変わり、組織への帰属意識が高まる可能性がある。職域接種は、自治体等が行う集団接種とは異なり、組織内での合意形成にも配慮する必要がある。

 オリンピック後に新型コロナウイルスの感染拡大が起こらないことを切に願う。

 
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