【道標 経営のヒント 282】ステイケーションの醍醐味とは コンテンツキュレーター 小倉理加

  • 2021年5月20日

 1週間、ホテルに滞在してみた。今はやりのステイケーションである。場所は、「アンダーズ東京」。数多くの長期滞在プランが登場している中、このホテルを選んだのには、きちんとした理由がある。実は、コロナ禍で定着した“ステイケーション”だが、2014年にすでに雑誌で特集をしたことがあり、そのときに協力してくれたのがこのアンダーズだったからだ。

 当時、“ステイケーション”という言葉を教えてくれたのは、イギリス人の友人だった。旅好き同士、情報交換するための会食の席で彼女が言いだしたのだ。「今、ニューヨークで人気のテレビ番組があるのよ。STAYとVACATIONをかけてステイケーションという名前なんだけど、自分が暮らす土地のホテルに泊まって、その周辺を散策し、旅人の目線でよく知る場所を再発見するという内容なの」。ステイケーションを日本人お得意の和製英語の一つと思う方がいるかもしれないが、純粋なるネイティブから生まれた言葉なのである。

 早速、その案をいただきアンダーズに相談したところ、スイートに宿泊しながら隣の丁子屋呉服店で和装に着替え、近隣の愛宕神社へ参拝に行くというプランを作ってくれた。当時を思い出し、ステイケーションならここしかないと考えたのだ。

 平時なら、1週間も同じホテルに宿泊すれば、観光が優先して、ホテルは眠るための場所になってしまう。しかし、今は滞在自体が目的となり、ステイケーションというより“ホームステイ”に近い。東京にいるので日常も平行して存在し、ホテルから仕事先へも出掛けていった。あれから7年もたつのだが、うれしいことに宿泊者限定のステイケーションツアーもきちんと残されていた。しかも、館内のアートツアーや夜景ツアー、近隣の魅力を紹介する歴史ツアーからスイーツ店を紹介するものまで実に充実。日本のステイケーション発祥の地らしい進化だった。

 また、アンダーズには宿泊者専用のラウンジがあるのだが、毎日通っているうちに顔を覚えてくれるスタッフもできた。彼女がチェックアウト前夜に、メッセージカードを部屋のドア下に残しておいてくれる心配りもあり、帰宅時には本当に去り難い寂しい思いをしたものだ。わずか1週間だったが、今でも虎ノ門を通ると第2のホームタウンのように感じる。

 ステイケーションの醍醐味(だいごみ)とは、こうやって心のホームタウンを増やすことではないだろうか。そして、ホームタウンを絞り込めなくなった暁には、名著「ティファニーで朝食を」の主人公ホリー・ゴライトリーのように名刺の住所に“Traveling”と書けたら、どんなにか幸せだろうと夢が膨らんだ。

 
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