【道標 経営のヒント 281】使う前より美しく、立つ鳥跡濁さず 九州国際大学教授 福島規子

  • 2021年5月5日

 長いこと気にかかっていることがある。トイレの個室に貼ってある「いつもきれいにお使いいただきありがとうございます」というアレだ。一説によると、「人は良い行動を示されると、自分も良い行動をすべきという意識が働く」らしい。みんながきれいに使っているのだから、自分もきれいに使わないと恥ずかしいですよと暗に示しているのだろう。

 意図は理解できるが、いつもきれいに使っている身としては、内心、余計なお世話と思ってしまう。下手に出て媚(こび)を売る印象操作的な言い方にも違和感を覚える。そんなこんなで、長い間、モヤモヤ感が拭えなかったのだが、先日ようやく膝を打つ文面に出会った。

「トイレは借りるモノ。借りたものは使う前より美しく」。

 短い文章ながら、日本人としての美徳を端的に示しており、まさに言い得て妙と言えよう。直截(ちょくせつ)的にきれいに使ってくださいというよりも心に響く。特に、「使う前より美しく」は当たり前のことだけれど、意識しないとなかなか実行できないことでもある。

 某会社の従業員トイレを借りたときに、「大をするときは、トイレットペーパーを2枚重ねにしてね」とイラスト付きの小さな貼り紙を目にしたことがあった。同社では従業員トイレは社員が輪番制で清掃にあたっているため、清掃担当者に対する配慮でもあるのだろう。その後は、2枚重ねを意識するようになった。また、洗面ボウルしかり。手を洗ったあとに洗面ボウルをクルリと一拭きする動作は、次に使う人への配慮にほかならない。立つ鳥跡を濁さず、である。

 社内でもちょっとした気遣いが求められる場面は多々ある。たとえば、従業員食堂で食事をしたあと、席を離れるときにテーブルの上をきれいに拭くことや、椅子をテーブルの下にきちんと入れることなどはできて当たり前である。

 以前、しつけのスペシャリストとして著名な保育園の園長が「幼い子どもたちに教えることはたったひとつ、使った椅子を机の下にしまうこと」と言うのを聞いたことがある。整理整頓が常態化されれば、幼子であっても乱れた状態に違和感を覚え自ら進んで整理整頓をするようになるらしい。三つ子の魂百までとも言うが、幼い時に身についた習慣は、大人になっても忘れないものなのだろう。

 だが、大人なのにこれらの振る舞いが身についていない人はいる。大人に対し「椅子はテーブルの下にしまいなさい」とは誰も言わないし、ましてやトイレの使い方などは教えてもくれない。よしんば、他の人に不適切な行為を目撃されたとしても、見て見ぬふりをされるだけである。

 新入社員の皆さん、「使う前より美しく」。常に、心に留めておきましょう。

     
 
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