【道標 経営のヒント 278】今春を刻む「永遠の花」 コンテンツキュレーター 小倉理加

  • 2021年4月15日

 今、日本は空前の現代アートブームを迎えている。理由の一つは、投資目的で購入する、30代から40代の若手経営者が増えたこと。また、コロナ禍で海外のアートフェアなどが、軒並みオンラインを通じて購入できるような仕組みを導入したことが大きい。加えて、その背景には、リモートワークの際に画面に映り込ませるために購入する人が出てきたからだという。

 その流れを組んで、現代アートの取材がいくつか舞い込んだ。著名なコレクターの方々にお話を伺う貴重な機会を得たが、彼らは共通して「買ってみて初めて分かることがある」「最近は、日本の若手を応援する方向にシフトした」というのだ。

 そこで、何か記念に日本の作家の作品を1点購入しようと決意した。現代アートの最大の魅力は、実際に作家本人と対話ができることである。その人の生き様に引かれ、ぜひ会ってみたいと思う人の作品を手に入れようと思った。

 たくさんの専門家の話を注意深く追っていくうちに、1人、今後期待できる作家として全員が推している女性がいた。ギャラリー「シュウゴアーツ」に所属する近藤亜樹さんだ。楽園のような鮮やかな色彩と、大胆な筆づかいが特徴で、作品が持つ力強さに一瞬で引き込まれて息をのむ。

 近藤さんは、まだ30代前半だが、東北芸術工科大学在籍中から、「天才がいる!」と一目置かれていた。数名の作家が彼女と一緒に描くと、あまりのスピード感と躍動感に手を止めてしまうほどだと聞いた。

 映画のように波乱万丈のような人生を送っているところにも興味を持った。結婚してお腹に小さな命が宿ったばかりの頃に、ご主人がカレーの修業にと出掛けたインドで客死してしまったのだ。そんな中でも描くことはやめなかった。描くことがかえって浄化につながっていたのかもしれない。その痛みを抱えながらも、パワフルな作品を生み出す原動力に触れたいと思った。

 彼女しかいないと心が決まったところで、ちょうど作品集とアクリル絵の具で本人が描いた花の作品が一緒に収められた特装本が発売されるタイミングと重なった。悩ましいことに、限定100冊の特装本に収められた花の絵は全て異なるため、1点には選びきれず、結局3点購入した。1人のコレクターの方が、「単体で見るよりも並べて構成したときの色合いや形を想像すると楽しい」と話してくれたからだ。

 今、自宅では三つの花が満開だ。この作品を目にするだけで、心が晴れやかな気持ちになる。近藤さんは、今、山形に暮らしているので、すぐには会いに行けないが、近い将来、本人から、この三つの花の話を聞けることが今から楽しみでならない。

 
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