最近の業務の中で直面しているのが「照明の2020年問題」である。今年で蛍光灯や白熱灯、水銀灯などの生産が終了する。政府の省エネ推進策によるもので、国際条約の「水俣条約」が施行されることによる。代替照明はLEDで、社会全ての分野でLED照明への転換が余儀なくされる。この問題を宿に置き換えて考えてみた。
和風の宿でくつろぐひととき、木造建築のなんともいえない深い味わいを際立たせるものとして、ほんのり灯る照明の役割は大きい。日本情緒の演出に欠かせないはずである。
しかしコロナ禍で経営的にも苦しい今日、全館の照明をLEDに交換することはコストダメージが大きいはずである。特に大型の宿では膨大なコストがかかる。
数年前には地デジ化に伴うテレビの交換、さらに燃料電池車増に伴う水素ステーションの設置など、数年おきに出費が続くだけに、またか、と嘆く経営者は多いのではと思う。
LEDは従来の蛍光ランプなどと比べて高価だが、その分、寿命が長い、電力料金が安価で済むなどのメリットがある。だが、単純にランプ自体を交換すればいいと思っている方も多い。
意外と知られていないのが、通常のLEDランプは「直流」で作動すること。だから交換する際には交流電流から変換するための「安定器」の工事が必要となる。最近は工事不要LED照明が販売されているが、安定器の配線を切るバイパス工事を行わないため、常に安定器に通電され続けることになり、消費電力がランニングコストを増大させてしまう。
LEDに替えるメリットを信じて疑わない方も多いようなので、照明器具交換の際には、業者さんによく相談することをおすすめする。既に取り組みを終えている宿も多いと思うが、対策遅れの宿もきっと多いはずである。
さて、無事にLEDに交換できたとしても実は問題が残っている。蛍光灯の明かりと比べて感じることだが、LEDは指向性が高いため光が直線的で照らす幅が狭い、あるいは暗さやまぶしさなども感じるはずである。
色彩にもばらつきがある。特に照明による和の雰囲気を醸す空間では、光から感じる温かみが演出しづらい。これらの問題はLED導入当初から指摘されていたことで、各照明メーカーもそれほど広言していない。
解消策は、LEDをおさめる照明器具に工夫を凝らしたものに替えることだ。実は今、そのソリューションの広報業務を請け負っている。扱っている製品は「交流」電流で作動するLED照明器具。工事も簡単である。技術革新はこんな分野でも進んでいる。