【道標 経営のヒント 132】旅館の動脈硬化 佐々山茂

  • 2018年3月8日

 近頃クライアントの旅館から設備配管の老朽化についての相談が相次いでいる。ある日突然天井から水や湯が漏れたり、汚水があふれたりするから厄介だ。宿泊客1人当たりの水道使用量が1トンにもなると漏水を疑うし、ピンホールが空くのは日常茶飯事だ。

 先月の国際ホテルレストランショーで観光庁・宿泊業の生産性向上(省エネ推進)事業で100名ほどが集まりシンポジウムを開いた。その時のアンケートで、設備インフラでどのような問題を抱えているかの項目で、旅館関係者20名中17名が配管の老朽化と回答した。また国際観光施設協会エコ・小委員会で設備インフラの相談会を開いたが、やはり配管の老朽化の問題を抱えている施設が多かった。

 バブル前後の建物がすでに25年前後経過し、それ以前の建物で営業されている施設も多い。建物の動脈硬化といえるこの問題は耐震よりも切実な問題だ。空調機やボイラーなどの機器の取り換えはさして難しくはないが、天井裏、床下、壁の中に隠れた配管を取り換えるのは厄介だ。増改築を繰り返し、竣工図がない中で計画するだけでも困難でいくらかかるかも分からない。営業しながらの工事になるので経路を変えたり、方式を変えたりといろいろな選択肢の中から検討する必要があり経験と技術力が必要になる。

 地方には技術者が不足していて配管の更新といった手間がかかる割にお金にならない仕事の受け手がない。給湯管、温泉管などの保温材が欠損していて熱を逃がしているケースも実に多い。

 相談される方の多くは引き継いだ建物の維持管理で悩まれている方が多い。父親が25年前に造った施設で困っているといった声だ。

 建物は一度造れば永遠に使えるわけではない。建物は人間と同じで年を重ねれば循環器系の病になり、治療が必要だ。減価償却の終わった建物、設備はそれなりに治療しないと使い続けることができない。大切に扱っていれば50年経っても十分現役で働いてもらえる。新築に坪単価120万以上かかる時代だからこそ、無駄にかかっている水道光熱費を下げた費用で建物をケアして使い続けたい。

 やはり生産性向上を真剣に取り組む時だとつくづく思う。昔の旅館経営者は普請道楽で設備や温泉の管理に詳しかった。継続的に旅館を経営するためには建物をもっと大切にしてほしいと設計者として思う。

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