【道標 経営のヒント81】館内サインの国際化 宮坂登


 訪日観光客者数が2400万人を超え、さらに今後も増えていくことが予測されている。国を挙げての一大事業が進展中だ。

 その受け皿になる宿泊施設が潤ってくれればそれに越したことはないが、さまざまな宿の方々にお話を聞いてみると、今ひとつ声のトーンが上がらないと感じることもある。

 先日も「他のお宿さんはインバウンドにどう対処しているのか」と質問された。来館者が多いのはうれしいものの、おもてなし全般をインターナショナル仕様に変えていかなくてはならないことに怖れのようなものを感じているようだ。

 外国人を大切にすると、日本のお客さまが離れていってしまう、という意識もあるように思う。特に純和風の伝統的な宿にその傾向が強い気がする。

 サインの制作現場にその話をブレークダウンして考えてみたい。例えば、多言語化にあたっては、視覚的な問題として違和感を覚えるようだ。英語やハングルなどが日本空間に存在すると異質なものと感じるという方も多い。

 制作当事者としての意見を述べさせていただくと、決してそんなことはない。純和風空間であっても、デザインあるいは素材選びの考え方によって空間イメージを損なうことなく掲出できる。

 実際に、和風イメージを大切にしながらも日本語、英語、中国語、韓国語を併記したサインで成功している宿もある。

 昨今、公共的な場にデジタルサイネージを使用した映像型広告が登場している。大型ホテルでも見かけるが、施設の案内的な使われ方が多い。例えば、フロント前やロビー空間に掲出されている館内の全体案内図にもデジタルサイネージを採用してみてはいかがだろう。

 立体的なフロア案内図も同じ図面で日本語、英語、中国簡体字など個別表現を用意し、1言語10秒の表示時間で映り変わっていくようにセットすればいい。1枚の板に複数言語を入れ込むと煩雑なイメージが生まれるが、これだと表現自体もスッキリとする。さらにそこに来館感謝・再訪へのメッセージや注意事項を添えることもできる。

 語学に堪能なスタッフがいなくても館内の全体像やサービスのあらましを分かりやすく伝えることができる。人材不足の解消にも一役買う。館内でのさまざまなイベント案内や天気、周辺観光情報を流すことも可能になる。目の着くところに設置するだけ。ひとつの画面で驚くほど多くの情報を自在に掲示できる。サイン制作の観点からするとぜひ採用してほしい考え方だ。

 今までさまざまな宿で提案しているが、採用例がないのが何とも不思議でならない。

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