【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 601】2022年に取り組むべきこと7 青木康弘


青木氏

 前回に引き続き、2022年に取り組むべきことを紹介したい。21年は新型コロナ対策に翻弄(ほんろう)された1年だった。早期の収束が期待されたが一転、回復の兆しも見えないまま1年が過ぎ去ってしまった。今年こそは逆境をチャンスに変える1年としたい。

 8、料理提供のあり方を見直す

 旅館・ホテルの運営上の悩みとして最も多いのが、料飲部門と調理部門に関するものだ。日本旅館の伝統を守るのは大切なことであるが、解決が難しいのであれば別の選択肢を検討したい。過去のやり方にとらわれずとも、お客さまに喜んでいただける運営方法は他にある。

 一つのやり方は、食事の提供方式を変えることである。例えば、あえて料理を提供せず、食材を提供するというやり方がある。客室を改装してミニキッチンを作る。そこに下ごしらえ済みの食材を提供するのだ。施設にとってはサービススタッフが不要となる。マニュアルさえ準備すれば調理人でなくても食材の準備は可能だ。一見手抜きとも思える食事の提供方法であるが、お客さまの評価はすこぶる良い。食事を作ることをきっかけに、宿泊者同士のコミュニケーションを深めることができるからだ。

 もう一つのやり方は、食事提供場所のコンセプトを変更することだ。例えば、パブリックを改装したり敷地の一部を増築したりして、外来でも立ち寄り可能なレストランやマルシェを作る。そこで宿泊者向けの食事を提供するというやり方だ。一般的な旅館だと、豪華な会席料理やブッフェを提供しなければならないという先入観があるため、莫大な費用をかけて食材や人材の確保を行う。しかし、適正な対価をお客さまからいただけているか疑わしいケースが散見される。売上高に対する食材費・人件費の比率(FL比率)をチェックしてほしい。飲食店の適正比率は55~60%といわれている。客室や大浴場を備える旅館・ホテルが飲食店並みのFL比率だと、適正な対価を頂けていないということになる。この状況が長く続くと、設備投資ができず、ジリ貧の状況に陥ってしまう。

 消費者の価値観は多様化している。宿泊施設に豪華な食事を求めないお客さまも増えてきた。他館との同質的な競争に巻き込まれることなく、常識にとらわれない形で料理提供を行うことをお勧めする。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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