
前回に引き続き、アフターコロナ時代に取り組むべき施策について紹介しよう。新型コロナウイルスの感染抑制を目的とした強烈な自粛要請や衛生指導は、消費者の生活様式や価値観、嗜好を大きく変えてしまった。従前のコンセプトや運営方針、商品サービス、ハード設備では宿泊者の満足が得られない可能性がある。早めに対策を講じて良いスタートを切りたい。
16、働き方改革関連法への対応を忘れずに行う
新型コロナの流行によりなおざりになりがちなのが、働き方改革関連法への対応だ。不安定な経営環境にあるが、着実に対処していきたい。関連法の中で、今年取り組む必要があるのが、時間外労働の上限規制と同一労働同一賃金である。
時間外労働の上限規制は、大企業では2019年4月に施行されていたが、中小企業も1年遅れの本年4月から対象となっている。時間外労働の上限を月45時間、年間360時間を原則として、臨時的な特別な事情があって労使が合意する場合でも年720時間、月100時間未満(休日労働含む)、2~6カ月平均80時間以内(休日労働含む)を限度とするものである。
休業に伴い離職者が増加している中、新型コロナ対応ガイドラインの順守、Go Toキャンペーン参画に伴う準備や顧客対応により業務負荷が高まっている状況にある。行政主導の割引施策により昨年同月よりも高稼働となっている施設もある。これまでの業界慣習にこだわらず、人員配置や部署ごとの業務内容、サービススタンダードを根本的に見直すことで残業発生を抑制しよう。
同一労働同一賃金も中小企業を対象に1年遅れの来年4月から施行される。同じ職場で同じような仕事をする正社員とパートタイム社員との不合理な待遇差別を禁じるというものである。旅館・ホテル業は、フロント係や予約係、客室係、ホール係等、正社員とパートタイム社員が同じ業務をする場面がある。業務内容や責任に応じた待遇となっているか改めてチェックすることをお勧めする。
見落としがちなのが、賞与や諸手当である。会社の業績等への貢献に応じて賞与を支給している場合、パート社員にも貢献に応じて支給する必要がある。通勤手当や出張旅費、皆勤手当、食事手当も正社員と同一の支給をする必要がある。諸規定の改訂や昇給昇格の査定にも影響があるため、準備期間を考えると本年末までには見直しに着手したい。
(アルファコンサルティング代表取締役)