前回に引き続き、すぐに効果が出る経費削減のコツを勘定科目ごとに紹介しよう。好況に見える観光業界であるが、政情不安や災害の影響を受けやすいというリスクを軽視してはいけない。多くの利益が出たからといって節税を名目に経費を使い過ぎてしまうと、万が一の時に資金繰りに窮することになる。好況に見える今だからこそ経費の引き締めを行いたい。
10、外注費
旅館・ホテルの外注費として計上するものは、客室や共用部の清掃や接客・調理スタッフの派遣、売店・レストラン運営などが挙げられる。元帳で外注費の内訳をよくチェックして、売り上げに対して経費率が上昇しているものはないか確認すると良い。
外注費といっても実質的には人件費が大部分を占める。人手不足と採用難の影響は外注委託会社にも及んでおり、求人費、人件費、社会保険料のコスト増分が外注費に上乗せされている状況にある。中にはコスト増を理由に便乗値上げしてくる業者もあるので見積もりはよくチェックした上で交渉を進めたい。
外注委託会社と条件面が折り合わないようであれば、一部内製化も検討しよう。就業規則の改定や求人票作成、スタッフ管理など業務は増えるが、手間以上に経費削減につなげることができる。
クラウドサービスが普及している現在では、自社で管理業務を行っても以前のような手間と経費がかからなくなっている。外注から内製化への切り替え時期は一時的に経費が膨らむので、資金繰りに余裕のあるうちに取り組みたい。
11、サービス費
主なものとして、客室菓子やおしぼり、ウエルカムドリンク、有線放送の利用料、新聞・雑誌が挙げられるが、計上基準は旅館・ホテルによってまちまちである。販売促進費や消耗品費として計上している館もある。
もし、皆さまの館でサービス費の内容が即答できなければぜひ元帳を見ることをお勧めする。中身がよく分からない勘定科目ほど、合理化されていない経費が含まれていることが多いからだ。昔からの慣習にとらわれず、費用対効果の高い選択肢はないか検討しよう。
(アルファコンサルティング代表取締役)