前回に引き続き、働き方改革法への対応について具体的なポイントを紹介しよう。罰則付きの残業時間の上限規制、年次有給休暇の取得義務、勤務間インターバル制度導入の努力義務、同一労働同一賃金など、旅館・ホテルの運営方法を根本から見直さなければならない制度改正が多い。早いものは来年4月1日より施行されるので、早めに準備しておこう。
(7)高度プロフェッショナル制度
職務の範囲が明確で一定の年収を有する正規雇用スタッフが、高度な専門的知識を必要とする業務に従事する場合に労働時間、休日、深夜の割増賃金などの規定が適用除外される制度のことである。
導入にあたっては、年間104日の休日を確実に取得させることに加えて、▽勤務間インターバルを設けること▽在社時間に上限を設けること▽2週間連続の休日を確保すること▽臨時の健康診断を実施することなど、いずれか実施することが義務となっている。
本制度の対象として想定されている職種は今のところ、為替ディーラーや経営コンサルタント、研究開発職などであるが、対象となる職種は今後拡大される可能性が高い。年収が高く、高度な専門知識を必要とし、労働時間と成果に関係性が強くない職種が対象となると言われている。
今後、対象職種が拡大された際に、旅館・ホテル業で該当する可能性があるのはレベニューマネージャー(予約責任者)だろう。高度な需要分析に基づき宿泊料金と客室在庫をコントロールするレベニューマネージャーは、業務の巧拙によって館の売り上げに大きな影響を与える重要なポジションだ。従って、労働時間に関係なく成果で評価することが妥当と言える。
国内観光マーケットは成長基調にあるが、相次ぐ新規オープンによって近い将来、過当競争に転じる恐れがある。高い客室単価、客室稼働率を維持するために、優秀なレベニューマネージャーは、引き抜き合戦になる可能性が高い。高度プロフェッショナル職として人材確保できるよう、今のうちから社内制度を見直していくことも必要だろう。
(アルファコンサルティング代表取締役)