JTB総合研究所は10月16日、海外旅行の費用やコロナ前後の変化に関する意識調査の結果を発表した。
新型コロナウィルスが「5類感染症」となって1年以上が経過し、海外から日本を訪れる旅行者は急増しました。しかしながら、日本から海外へ出かける旅行者は、コロナ禍前と比較して7割程度にとどまっています。ここのところの急激な円安から、「海外の物価が高い」といったニュースもしばしば耳にするようになりました。実際のところ、海外旅行に関し、人々はどのように感じているのでしょうか。2023年以降に海外旅行をした人を対象に、海外旅行の本音をとらえるため、株式会社JTB総合研究所(東京都品川区 代表取締役社長執行役員 風間 欣人)は、アンケート調査とインタビュー調査を交え、「海外旅行の費用やコロナ前後の変化に関する意識調査」をまとめました。
【調査結果】
(1)費用の高さは、覚悟の上?正直なところ高かったけれど、「想像の範囲内」が42.5%で最多。「思ったより高かった」は37.6%で、合わせて約8割が「高かった」と感じる
円安が進んだ2023年以降に海外旅行をした人に対し、海外旅行の費用について、実際にどのように感じたかを聞きました。「高かったが、想像の範囲内」が42.5%と最も高く、「思ったより高かった」の37.6%を上回りました。合わせて約8割は「高かった」と感じていますが、ある程度、高さは覚悟の上で海外旅行をした人が多そうです(図表1)。
(2)高くてもやっぱり、また行きたい!「思っていたより高かった」と感じた人でも62.7%、全体では64.7%が「今と同じくらい費用がかかっても、来年もまた行きたい」
次に、海外旅行は高いので、「もう行きたくない」と思ったのか、「それでもまた行きたい」と思うのか、どちらかを聞きました。結果としては、「今と同じくらい費用がかかってもまた行きたい」と考える人が多数派となり、全体では64.7%、「思っていたより高かった」と感じた人でも、62.7%がまた行きたいと回答しました(図表2)。
(3) 海外旅行に行きたい理由は、「さまざまなものを見て感動できる」、「インスピレーションを与えてくれる」
では、高くても行きたいと思ってしまう海外旅行の魅力とは何なのでしょうか。インタビュー調査からピックアップしてみると、「さまざまなものをみて感動できる」、「日本とは違う非日常と刺激がある」、「インスピレーションを与えてくれる」などがあがりました。実際に現地に行くことで、日常生活では得ることができない、心に触れる何かがあるのかもしれません(図表3)。
(4)出費を抑える工夫は様々。旅行費用と滞在費用の両面から節約して賢く旅行
高くても海外旅行に行きたい、とは思っていても、費用を抑えられるにこしたことはありません。アンケートとインタビューを通じ、出費を抑える工夫を具体的に聞きました。
旅行費用を抑える工夫としては、「旅行費用が安い時期を選ぶ」、「LCC(格安航空会社)などを利用」、「比較サイトなどを活用」など、滞在費用を抑える工夫としては、「日本から食料や飲料を持っていった」、「物価が安い旅行先を選んだ」、「日本で両替をしていった」、「あらかじめ安い店を探して行った」などがあがりました。みなさん、様々な工夫をして、賢く旅行をしているようです(図表4、5)。
(5)コロナ禍前と比べ、現地で感じた変化:「旅行先で見かける日本人が減った」、「衛生対策が以前より充実した」、「観光施設などに入場するのに事前予約が必要になった」、「ネットの情報と、現地での情報が違うことが多くなった」
最後に、コロナ禍前と後に行った海外旅行先では、どんな変化を感じたかを聞きました。現地で感じた変化としては、まだ完全に海外旅行者数が回復していないこともあり、「旅行先で見かける日本人が減った」という意見がありましたが、その他の変化としては、「現地の衛生対策が以前より充実した」、「観光施設などに入場するのに事前予約が必要になった」、「ネットの情報と現地での情報が違うことが多くなった」などが上位に上がりました。
旅行を計画する際に感じた変化としては、「行きたい旅行先への直行便が少なくなった」、「海外旅行に行かなくても、国内旅行で十分と思うようになった」、「旅行会社のプランが減った」など、海外旅行先を検討する上での選択肢がまだ少ない状況が読み取れます(図表6)。
(まとめ)
冒頭でも触れたように、訪日インバウンド旅行者の増加に比べて、日本人の海外旅行者数はコロナ禍前の水準には戻り切っていません。しかしながら、今回の調査結果からは、たとえ費用が高かったとしても、海外旅行へ行きたいと考える人は決して少なくなく、様々な工夫をして海外旅行へ出かけている様子がわかりました。
過去、9.11やSARS等の影響で海外旅行者数が減少した後も、日本人は海外の旅行者と比べて時期は遅かったものの、着実に旅行者数は回復してきました。コロナ禍後も時間は少しかかったとしても、再び回復することが期待されます。しかしながら、9.11やSARSの時とコロナ禍が大きく違う点は、海外旅行に物理的に行けない時期が長く続いたことです。アンケート結果でも、「海外旅行に行かなくても、国内旅行で十分と思うようになった」と回答した人が約2割いました。また、「海外旅行に誘っても断られることが多くなった」と回答した人も13.6%となりました。これまでの当社の調査研究より、市場が拡大する時期には、「誘ったり誘われたりする」行動で、普段は旅行をしない「浮動票」のような層が大きく動き、市場が活性化することがわかっています。一度、途切れてしまった習慣を再び呼び戻すためにも、海外旅行へのきっかけづくり、気運づくりが重要と言えそうです。
また、コロナ禍後に感じた変化として、入場者数の制限などの関係から事前予約制やデジタル化などが進んだこと、その一方で、状況に応じて情報がめまぐるしく変わることで、ネットでの情報更新が追い付いていない状況も明らかになりました。正確な情報をいかにタイムリーに旅行者に届けるかということも海外旅行へのハードルを下げるために大切なことではないでしょうか。
【調査概要】
調査方法:インターネット調査会社が保有しているモニター対して、web アンケート調査/インタビュー調査を実施
対象者: スクリーニング調査:日本国内に居住する 20 歳以上の男女(3,851名)
本調査:2023年以降に観光を目的とした海外旅行をした人(221名)
インタビュー調査:本調査と同条件で、インターネット上のチャット形式で実施(22名)
調査時期:2024 年 9 月 26 日~10 月 2 日