コロナ禍での人員整理からインバウンドの急増まで、激変するホテル業界で生き残っていくためには何が必要か。ホテル業界で50年以上の経験を持つ大ベテランが、成長したいと願うすべてのホテルスタッフに「気づき」を与える一冊を上梓した。「経営に意識を向けると、仕事への意識も変わる!」と、経営の根幹である財務三表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)の理解が、日々の仕事に差をつけるのだと説く。
本書は、ホテル・旅館の運営や経営の実務を財務の視点から学ぶための学習書である。著者は「はじめに」で、「自分が働く会社を財務的に知る」ことの重要性を訴える。これまで日本のホテルや旅館の多くは、社員に対して財務諸表を十分に公表してこなかったと指摘。そのことが、業界が「財務リテラシーに弱い」と言われてきた一因であり、社員の賃金体系が長く低迷する結果にもつながったのではないかと分析する。
著者の鈴木光一氏は、旧神戸オリエンタルホテルを皮切りに、ロンドンやトロントのホテルに勤務。帰国後はシンガポール航空で本社駐在を経験し、日本ビューホテルの海外ホテルやシンガポール、インドネシアのホテルで総支配人を歴任した。二十数年に及ぶ海外駐在を経て、浅草ビューホテル総支配人、郡山ビューホテル代表取締役社長を務めた経歴を持つ。
本書は、第1章「損益計算書」、第2章「貸借対照表」、第3章「キャッシュフロー計算書」、第4章「ROEとROA」で構成されている。専門的な内容でありながら、著者はデジタル時代の情報収集にも触れ、「『紙』は文章を読んで、肌で感じて、また立ち止まって考え、さらに読み進んで時には戻ることもできる」と述べ、深く理解するためには紙媒体での学習が有効であると主張する。
著者はあとがきで、「ホテル旅館業界は財務リテラシーにうといと言われて久しく、それを脱却するためにはまずもって決算書が読めることが必然的にして当然です」と力強く語る。会計知識は企業人生を豊かにし、妥当性のある賃金のあり方を示唆してくれるものでもある。世界規模で100兆円市場とも言われる「大観光時代」において、本書は業界全体のレベルアップに貢献する一冊となるだろう。
四六判並製288ページ、定価1540円(本体1400円+税)。
発行=文芸社。





