【観国之光 364】11年目の3.11 復興の実感乏しく 本社論説委員 内井高弘


11年の月日がたっても、福島県には時が止まったままの地域がある

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生から3月11日で丸11年となる。復興庁によると、2月8日現在、震災による避難者は全国で3万8139人となり、特に被害の大きかった東北3県(岩手、宮城、福島)は8754人に上る。中でも福島は6710人と最も多い。

 震災以降、熊本地震(16年)や北海道地震(18年)などが起きた。地球温暖化に伴い、台風や豪雨災害も頻繁に発生。加えて、20年からは新型コロナウイルスが猛威を振るっている。

 11年がたち、関心も薄れてきているように感じる。筆者も勝手に思っていた。「10年たったのだから」「復興も進んでいるのでは」…と。

 日本旅行業協会(JATA)が主催する東北地方の復興支援活動「JATAの道プロジェクト」(2月24~25日)に参加し、そうした思いは間違いだったことが分かった。

 津波被災地は道路などのインフラ整備は順調に進んでいるようで、岩手、宮城両県はハード面の整備が総仕上げの段階に入ったとされる。しかし、福島県は原発事故による影響が長期化しているため、立ち遅れている。帰還困難区域も広い範囲で残り、避難区域の帰還、移住の促進や産業振興はこれからが正念場といわれる。

 同行取材で特に印象に残ったのは福島県大熊町や富岡町、JR常磐線の夜ノ森駅周辺など、原発事故の影響がなお色濃く残る地域の景色だ。

 国道6号沿いのそれらの町には除染廃棄物の袋の山や、バリケードで隔てられた帰還困難区域の民家、紳士服のコナカやファッションセンターしまむらなど荒れ果てた商業店舗が放置されている。時が止まっているとしか言いようがない。

 夜ノ森駅は全町避難を強いられた富岡町の帰還困難区域にあったが、現在、駅周辺は避難指示が先行解除されている。

 旧駅舎は解体され、真新しい駅舎になり、全線開通(20年3月)後の20年11月には待合室も完成、装いを新たにした。しかし、目の前には荒れ果てた商店や民家が軒を並べ、町民の姿は全く見えない。

 復興庁と町が実施した21年度の町民アンケートでは、49%が「戻らない」と回答しており、町の再興は容易ではないことがうかがえる。

 遠く離れた場所にいると、被災地の現状は見えにくく、また情報もなかなか入って来ない。機会を作り、足を運ぶことの大切さを実感した。

 時間がたっても解決できないことがあるのは分かっているが、それでも何とかならないのかと思う。3・11は改めて犠牲者に哀悼の意を示し、被災地支援の決意を新たにしたい。 


11年の月日がたっても、福島県には時が止まったままの地域がある

 
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