
「Go To」の一時停止は観光業に大きな痛手になりそうだ(写真と本文は関係ありません)
政府の観光需要喚起策「Go Toトラベル」事業が新たな局面を迎えた。
菅義偉首相は11月21日、新型コロナウイルス感染拡大地域を目的地とする旅行の新規予約を一時停止し、予約済みの場合も補助対象から外す方針を示した。これにより札幌、大阪両市を目的とする旅行が対象から外されることになった。
27日には両市を出発する旅行についてもGo Toトラベル事業の利用自粛を呼び掛けた。
同キャンペーンで客足が戻りつつあった観光業界にとって大きな痛手だ。書き入れ時である年末年始の旅行シーズンを前に、業界関係者は肩を落とす。
感染拡大は本当にGo Toのせいなのか、と思うが、爆発的な感染へ事態が向かいつつある中、いったん規模縮小へかじを切るのもやむを得ないのだろう。とりわけ、医療機関の感染者の受け入れ病床が埋まりだし、「このままだと医療体制そのものが崩壊してしまう」と指摘されると、Go Toを継続しろとはいえない。「観光業界は自分のことしか考えていない」という批判も出てきかねない。
とはいえ、事態は深刻だ。大手旅行会社も事業縮小を余儀なくされており、体力の弱い中小・零細企業の不安は察してあまりある。
西村康稔経済再生担当相は、今後3週間で感染増加を抑えられなければ緊急事態宣言が視野に入ってくると述べている。クリスマス前まで「我慢の3週間」となるが、観光業はもとより、忘年会など繁忙期の飲食店にも影響を及ぼしそうで、十分な補償が不可欠だ。
経済活動と感染防止の両立は必要だが「今は感染の抑止に比重を移すべきだ」との意見も多い。Go Toは政府主導で始まった。一時停止した場合、その地域や事業者への経済支援策も責任をもって実施すべきである。
Go Toトラベル事業を熱心に進めてきた首相にとって、運用の見直しは苦渋の決断であろう。「この3週間が極めて重要な時期」と訴えており、感染拡大を乗り越えていく決意を示している。その後、どんなコロナ対策をとっていくのか、方向を明確に示してもらいたい。
運用見直しで現場は混乱、疲弊していると聞く。場当たり施策に「いい加減にしてほしい」という厳しい意見もある。業界を支援する施策が足を引っ張っているとしたら本末転倒だ。
Go To以外の新たな支援策はできないものか。一時期、将来の宿泊費の一部を前払いする旅館サポーター制が話題となった。こうした動きを国が財政支援するのはどうなのだろう。愚策といわれればそれまでだが。
「Go To」の一時停止は観光業に大きな痛手になりそうだ(写真と本文は関係ありません)