6月19日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた都道府県をまたぐ移動が全面解除された。初の週末となった20~21日には、駅や空港を行楽や帰省の人が行き交い、観光地にも人出が戻り始めるニュース映像が流れた。観光業にとっては久々の明るい話題といえる。
ただ、人の動きが活発になることで感染リスクが大きくなることは避けられないため、引き続き慎重な行動が必要だ。旅に出てまでコロナを意識したくはないが、やむを得まい。
観光庁も「新しい旅のエチケット」を公表。旅行時における感染防止のための基本的な留意事項に加え、宿泊や食事、観光施設など、各場面で注意すべきことを示している。
宿泊施設での過ごし方では「部屋の窓、ときどき開けてリフレッシュ」「おしゃべりは部屋に入って存分に」などと呼び掛けている。
夏の旅行シーズンが間もなく始まる。観光業にとっても書き入れ時となるが、例年のようなにぎわいを期待する声は少ない。栃木県の旅館経営者は「どこまで(客を)受け入れていいのか分からない。この地域は幸い感染者が出ておらず、もし当館で出たら(地域の)皆さんに合わせる顔がない」と心配を口にする。「お客さまにも協力を求め、感染症対策を徹底するしかない…」と戸惑い気味に話す。
落ち込んだ観光需要を回復させるには思い切った施策が必要で、政府が実施を予定している「Go Toキャンペーン」事業はまさしく当てはまる。キャンペーン委託費を巡り仕切り直しとなったが、どうやら8月から事業開始となりそうだ。
赤羽一嘉国土交通相はNHKの「日曜討論」(21日)で、早ければ8月の初めから事業をスタートし来年春にわたって実施、観光業を支援する考えを明らかにした。
キャンペーンが夏だけで終わらず、秋、冬、そして来春と長く続けば、疲弊した観光業にとって大きな助け舟となる。
キャンペーン対象は国内旅行のみで、宿泊や日帰り旅行代金の半額相当が支援される。もちろん上限があり、1人当たり1泊最大2万円まで、日帰りは最大1万円までだ。
1人で1泊2万円の旅行をする場合は、自己負担が1万円、残りの7千円を割引、3千円はクーポン券(地域共通クーポン)で還元される。支援幅が大きいため、「この際だから、高級旅館にでも泊まってみようか」と考える人も少なくないのでは。
「コロナはまだ終息していない。第2、3波もあり得る。キャンペーンはまだ早いのでは」という捉え方もあるが、それを承知でキャンペーンへの理解を求めたい。
移動自粛解除で人の動きも活発化しそうだ(写真と本文は関係ありません)