【観国之光 280】波紋広がる新型コロナ 緊急対策の有効活用を 本社論説委員 内井高弘


いつもは多くの外国人観光客でにぎわう東京・銀座だが、人通りも少なく静かな雰囲気だ(2月下旬撮影)

 新型コロナウイルスによる感染者が増え続けている。影響は観光業界にも及び、宿泊予約のキャンセルに加え、政府が大規模なスポーツや文化イベントの中止、延期を求める方針を決めたことで、各地で催しや集会を自粛する動きが広がっている。

 旅行意欲の減退につながらなければいいが、と思っていた矢先に、東京ディズニーランド・東京ディズニーシー(千葉県浦安市)とユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪市)が相次いで臨時休業することを決めた。

 いずれも3月15日までで、16日には再開するとしているが、「関係行政機関等と密に連絡をとり、改めてお知らせする予定です」(オリエンタルランド)と含みを残している。日本を代表する東西の巨大テーマパークの休業決定は他のテーマパークにも影響を与えそうだ。

 2月27日には安倍晋三首相が全国の小中学校と高校、特別支援学校に臨時休校を要請する考えを表明した。子どもたちに「出歩くな」というのは酷だが、かといって「せっかくの機会、家族で旅行に行こう」と軽々しくはいえない状況だ。重苦しい空気が日本全体を包んでいる。

 東京商工リサーチによると、愛知県蒲郡市の旅館「冨士見荘」がコロナウイルスの影響で初の経営破綻に追い込まれた。主力にしてきた中国からの団体客のキャンセルが相次いだことが響いた。

 北海道の鈴木直道知事は2月28日、感染拡大防止に向けた「緊急事態宣言」を出した。期間は3月19日までで、外出を控えるよう呼び掛けている。道は「中国人観光客の減少が3月まで続くと、観光消費が少なくとも200億円以上減る」との予測を公表、事態の深刻さがうかがえる。

 一方で、新型コロナには負けないとばかり、頑張っているところもある。京都の観光名所、嵐山の商店街は「今こそ!おこしやす」と呼び掛けるポスターを作った。嵐山モンキーパークいわたやまのポスターには「人間よりサルの方が多いとか、久しぶり。」。渡月橋のポスターは「すいすい渡れてなんか、すいません。」と思わずニヤリとさせられる。

 また、北海道のある温泉地では、修学旅行の団体大量キャンセルのため、格安で部屋を提供する旅館も出ているとか。

 気温が上がればウイルスの活動が弱まり、事態は収束に向かうのではないかと期待されている。温泉でも入って免疫を高めるのもいいのでは。春の行楽シーズンを迎えるこれから、コロナ騒動が早く収まることを願うばかりだ。

 業界も我慢の時だが、政府の緊急対策を活用し、当面の危機を乗り越えてほしい。

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