【観国之光 269】ワーケーション 地域活性化につながるか 本社論説委員 内井高弘


こんな美しい景色の中での仕事はさぞはかどりそうだが、休暇とのバランスも難しそう(南紀白浜)

 働き方改革がいわれているが、「ワーケーション」という働き方に注目する企業や自治体が出てきている。旅行会社もビジネスチャンスと捉えているようだ。

 仕事(ワーク)と休暇(バケーション)を組み合わせた造語。自然豊かなリゾート地でパソコンやテレビ会議システムなどを使って仕事をするかたわら、休暇も楽しむ。何だか優雅な働き方に映る。

 似たような言葉に「テレワーク」があるが、こちらは離れたところ(テレ)と仕事を合わせた造語。ワーケーションとの主な違いは働く場所にあるようだ。いずれにしても、通信技術の発達で、職場にいなくても自宅やリゾート地で仕事ができるようになってきたということ。

 リゾート地で働く人が増えることは地域活性化につながるだけに、自治体も関心を寄せている。その一つがリゾート地、南紀白浜などが有名な和歌山県だ。

 日経新聞は、「(和歌山)県が把握しているワーケーションの県内体験者は17~18年度で49社567人となった。増えるビジネス交流は地元に新たな活気を生んでいる」と報じている。

 県は2年ほど前からワーケーション事業をはじめ、フォーラムの開催や体験会などを開いてきた。その芽が実を結びつつあるようだ。

 その動きを如実に表しているのは日本航空の動きで、同社は10月27日から羽田―南紀白浜線で運航機材の大型化(座席数増)に踏み切る。南紀エリアを訪れる訪日客の増加に対応するのに加え、「IT企業の進出やワーケーションの普及などにより急増するビジネス需要のニーズに応える」意味合いもある。

 ワーケーションを推進する自治体の全国組織設立の動きもある。音頭をとるのは和歌山県と長野県で、名称は「ワーケーション自治体協議会」という。長野も軽井沢などリゾート地を抱える。

 現在は関心を持つ自治体がそれぞれワーケーション事業に取り組んでいるが、情報の共有や企業向けPRなどで連携することで事業化し、地域活性化につなげる狙いがある。

 また、旅行会社もワーケーションがビジネスチャンスになるとみて、商品化に取り組んでいる。

 例えば、KNT―CTホールディングスと近畿日本ツーリスト関東は7月、クラウドワークスと共同で、テレワーカーを対象にしたワーケーションツアーを長野県駒ケ根市で実施した。

 IT社会ならではの働き方だが、どう定着させるかが鍵を握りそう。仕事と休暇のバランスをどうとるかも重要。賃金体系は、家族は…。いろいろと気になる点もある。


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